インタビュー|自己犠牲には何のメリットもない 我慢せずにやりたいことをして、自分も家族も幸せでありたい〜 水光 涼さん

自己犠牲には何のメリットもない
我慢せずにやりたいことをして、自分も家族も幸せでありたい

株式会社フェズ 監査役 & 司法書士/水光 涼(すいこう すずか)さん

涼さんは、2歳と0歳の2児のママ。人材紹介の営業から一転、司法書士の資格を取得。現在は、司法書士とスタートアップ企業の監査役の二足のわらじで活躍しています。人生の転機がどのように訪れ、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。


妊娠出産でキャリアを分断させないため、司法書士資格を取得

― あなたにとっての人生の転機は?

私の転機は二つあります。
一つ目は、司法書士の資格を取ったことです。

私は新卒で株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルートキャリア)に入社しました。そこで、必死に目標を追っているうちに、目標達成しないと存在価値がないという価値観を抱いてしまい、身体も心もボロボロになって仕事に打ち込む20代前半を過ごしました。人材紹介の営業だったので、仕事の中で皆さんの履歴書を見ながら色々とアドバイスをすることもありました。その中で、女性は妊娠・出産で自分の意志とは別にキャリアが分断されてしまうと感じていました。そして、ふと自分が逆の立場だったら、履歴書に何を書けるのだろうか、と思ったんです。
そこで自分のキャリアを見直し、資格がそのまま仕事になるような職業に就きたいと考えるようになりました。母が司法書士で馴染みがあったこともあり、司法書士の資格取得を目指して勉強を始めました。そして、思い切って会社を辞め、ついに司法書士試験に合格。新しいキャリアを歩み始めました。

二つ目の転機は、子どもを授かったことです。

司法書士の資格を取得し仕事に夢中になっていたころ、母が亡くなりました。結婚はしていましたが、生前に母に孫の顔を見せてあげられなかった、という心残りがあり、そこから不妊治療を開始。2年ほどしてようやく子どもを授かり、無事出産しました。親となったことが、それまでの私の価値観が大きく変わるきっかけとなりました。

長男を出産した際に撮ったニューボーンフォト

 

子どもに対してだけでなく、社会に対してもgiverでありたい

― その後、どんなことが変わりましたか?

司法書士になってからは、仕事とプライベートが“融合”するようになりました。それまでは、仕事は仕事、プライベートはプライベートでそれぞれ相容れず、プライベートを犠牲にして仕事をしていました。それが、オンオフの切り替えがありつつも、それらがいい意味で一つになったように感じています。

例えば、友人の起業したいという相談や、家を売買したいという相談がそのまま自分の仕事になったり、飲みに行って知り合った人から仕事をもらったり。現在監査役を務めている株式会社フェズも、大学時代からの友人を通じたご縁で関わるようになりました。もちろん、純粋に自分の大切な人に相談されたときに、持っている専門性で応えてあげられること自体も私にとってとても嬉しいことでした。

仕事もプライベートもすべてが繋がるようになったので、一見仕事とは直接関係のない領域での学びも、極端な話、「子育て論の本が組織にも転用できるのではないか」というように、仕事にどう生かせるか、という視点で考えるようになりました。おかげで、自分自身がアップデートされる頻度が多くなりました。

フェズ社の役員

二つ目の転機である出産後は、自分中心だった価値観がおのずと変化し、giver(与える人)になれたんです。giveしたからtakeを期待する、takeに対してgiveをするという関係性を超越して、母は子どもに対して見返りなくgiverになれるんですよね。これはすごいことだと感じましたし、だからこそ不妊治療をしてまで授かった子どもが「生まれきてよかった」と思えるような社会にしたい、という気持ちが芽生えました。

はじめは子育てだけで大変でしたが、1年ほど経つ頃には子どもに対してだけでなくgiverになっていきたい、と思うようになりました。それまでも知識として「giverたれ」、ということは知っていましたが、母となってから感覚的にその意味するところを理解できた気がしています。

また、自己犠牲を辞めて、欲張りに生きようと思うようにもなりました。自分を抑圧した余裕のない中では、giverにはなり得ないと気づいたのです。子どもができたら自分を犠牲にしないといけない、と思いがちです。私自身も産休中はすごく辛く、それまで外を出回っていたのに、子どもが小さいうちは外出もしづらく、育児と家事をしていると一瞬で時間がすぎてしまう。社会から分断されているように感じ、自分の段取りが通用しないことが本当にストレスでした。かたや夫はこれまで通り仕事して、飲みにも行っているのに、なんで私だけこんなに我慢して頑張らなきゃいけないのか、そんな気持ちでした。

とにかく社会とのつながりを持ちたいという気持ちもあって早く仕事には復帰しましたが、子どもを預けて自分の時間を取れるようになって改めて、自己犠牲には何のメリットもないと感じました。自分のやりたいことをできていないと、その余裕の無さは子どもに伝わってしまいます。使えるものは使って、自分のやりたいことをして、幸せでありたいと思うようになりました。そのために、時間的制約がある中でも、これまで2時間かけてやっていた仕事を1時間でやれる方法はないか、出すべき価値は何なのかという考え方になり、仕事の生産性は上がりましたね。

子どもたちが「生まれてきてよかった」と思える社会にしたい

― これから、やってみたいことはありますか?

私は、子どもたちに「生まれてきてよかった」と思って欲しいし、そう思える社会にしたいと思っています。そのためにやりたいことが、3つあります。

1つ目は、子どもにとっての根幹となる社会である家庭を、幸せで笑顔あふれるものにすること。皆で健康的な食事を摂って、溢れんばかりの愛情を注いで、そして夫婦仲良くいたいと思っています。

2つ目は、日本で生まれてきたからには、日本に生まれてよかったと思ってもらうこと。そのためにも、日本をもっと豊かにしようとする新しいサービスやプロダクトを生み出すスタートアップ企業を支援すること。今、フェズに携わっているのは、自分なりのスタートアップ支援の形を築く基盤作りのため。まずは監査役として経営の近くにいさせてもらっているので、フェズ経営を言語化し、スタートアップに携わる方々の役に立つような書籍を出版したいと思っています。

3つ目は、カラフルな社会を実現すること。育児中のパパやママ、がん患者さん、介護をしている人など、現在の日本ルール上、フルタイムでは働きづらいけど、優秀な方はたくさんいると思います。生活環境や、パーソナリティ、強みや弱み十人十色様々なので、どんな人でも輝いて、活躍できるような社会にしていきたいなと思っています。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

今の自分を認めて、欲張りに自分の人生を楽しんでほしいです。自分自身の人生は、夫のものでも子どものものでもなく、自分のものです。誰かのために犠牲にしたり我慢したりする必要はありません。私自身、子どもを生後3ヶ月で保育園に預けることに周囲から「そんなに小さい子を預けるなんて可哀想だ」といわれましたが、子どもにとってもやりたいことを我慢している母親の元にいるより、保育のプロに預け、外の世界で社会とつながりを持つ方がいいのではないかと考えるようにしていました。

確かに育児中は物理的に時間がないし、寝不足になることも多いですが、限られた時間の中でやりたいことをやろうとすると、より取捨選択の基準が明確になり、自分の人生にとって本当に必要なことに時間を使えるようになると思います。諦めるのではなく、前向きに、やりたいことを実現する幸せな人生にしてほしいです。

わたしと街のつながり

中央区とのかかわりは?
2016年より中央区在住。夫の勤務先が汐留で、アクセスの良い晴海エリアにマンションを購入。

お気に入りの「グロースリンク勝どき」にて

この街の好きなところ
銀座や東京などの都心に近く、また築地や月島などの伝統的な街へのアクセスも良い。住んでいる晴海は都心でありながらも落ち着いていて、運河沿いは自然も多く、いい意味で整備されている街。保育園の入りにくささえ解消されれば、公園もたくさんあって本当に子育てしやすい街です。
おすすめのスポット
グロースリンク勝どきとららぽーと豊洲の前の運河沿い。グロースリンクのプレイホールには、大きなジャングルジムや本もたくさんあり、子どもたちと毎週のように遊びに行っています。豊洲のららぽーとは、便利ですし、前の運河沿いは晴れた日に散歩するのが気持ち良くて大好きな場所の1つです。
 
わたしの子育て

わたしの家族
平日はサラリーマン、週末は芸人という2足のわらじの夫と、2歳の穏やか系男子の長男と、7ヶ月の活発系男子の次男の4人暮らし。
長男は穏やかで優しい子。集中しだすと一人で黙々と絵を書いたり本を読んだりするエンジニアタイプ。
次男はアクティブで要領がよさそうなタイプ。お兄ちゃんや保育園でも1学年上の子たちと一緒にいるからか、かなり積極的で、色んなことに果敢にチャレンジしています。

会社でハロウィンのファミリーイベントを開催

子育てで大切にしていること
自分で考え、思いやりをもって、変化を恐れずに行動できる子であってほしい。孔子の論語の「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼(おそ)れず」という節から引用したものだが、この知、仁、勇の3つの徳を生きていく上で大切にしてほしい。そして、親ができるのはその力を身につけるための環境を提供することだと思っている。
子育て生活での失敗談
長男が生まれて半年のころ、入浴中に、息子を浴槽の半分開けた蓋の上にベビーマットに寝かせて、自分の髪を洗っていたら、その瞬間に寝返りして開いていた蓋から湯船にダイブ。長男もびっくりしすぎて泣きもしなかったが、本当に何事もなくてよかった……。

■ 経歴 ■ 水光 涼(すいこう すずか)さん
大阪府出身。2007年同志社大学商学部を卒業後、株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルートキャリア)に入社。新卒斡旋事業の法人営業を担当。2013年に司法書士試験に合格。司法書士法人中央法務事務所のパートナー司法書士として、商業登記、不動産登記等の実務を行い、大阪事務所の立ち上げ、相続事業の立ち上げなどに従事。2016年よりリテイルテック事業を行う株式会社フェズでバックオフィス業務に携わり、2018年2月より監査役に就任。
その後、2人の男の子を出産し、子育てしながらスタートアップ企業の監査役×司法書士という2足のわらじで活動中。

 

―編集後記―
産後すぐに復帰して、活躍されている涼さん。その生き様も話しぶりもとても清々しく、力強さだけでなく女性らしいしなやかさを感じました。涼さんのこの魅力に多くの人が惹きつけられ、そのままお仕事にもつながっているのだと思います。今後のご活躍からも目が離せません!