インタビュー|学歴社会からセンスの世界へ 年齢にこだわらず、チャンスの波に飛び込んだ ~梅本 靖子さん

学歴社会からセンスの世界へ
年齢にこだわらず、チャンスの波に飛び込んだ

インテリアコーディネーター・「ボヌール・ブッソール株式会社」代表/梅本 靖子さん

靖子さんは、長女(6歳)、長男(2歳)のママ。大手企業の会社員からインテリアコーディネーターに転身し、その後起業。多くの人の助けがあって自分の道ができたと語りいます。人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

 

周りと比較していた会社員から、フリーのインテリアコーディネーターへ

― あなたにとっての人生の転機は?

インテリアコーディネーターとしてインテリア業界に転職したことです。

インテリア業界に入る以前の私は、企業に勤める会社員でした。新卒で鉄道会社に総合職として就職し、その後第二新卒でメーカーの人事職へ転職。教育熱心な両親に育てられた私は、いい大学へ入り、大手の企業に勤めることが当然だと考えていました。希望通りの社会人になりましたが、周りを見渡すと自分よりも高学歴かつ能力の高い方が多く、挫折感を覚えていました。

社会人になって5年経った2008年夏頃から、趣味程度にカメラ、フラワーアレンジメント、色彩などを総合的に学べる講座を受講していました。その講座が充実していてとても楽しかったので、こういうことを仕事にするにはどうすればよいかと講師の先生に相談したところ、インテリアコーディネーター資格の取得をすすめられました。インテリアコーディネーターというのは、空間に対して、用途に合わせた色や素材、デザインなどをバランスよく組み合わせて、最適なご提案をする仕事です。

振り返ると学生の頃も、リニューアルや催事で綺麗になる百貨店の売り場を見て、夢のある空間作りで楽しそうだなと思っていたこともきっかけとなり就活中に百貨店を受けていました。それって実はインテリアコーディネーターの仕事の一つだったんです。資格のことを知ったとき、点と点が結びついて「これだ!」と自分のやりたいことに気づき、資格取得を目指すようになりました。

品川エキュートでの催事の様子

インテリアコーディネーターの資格を取得するため、週2回のペースで学校に通いました。資格試験が年に1回しかなく、当時29歳になっていた私は年齢からくる焦りもあり絶対に合格したかったので、働きながら通学することを選択しました。その甲斐あって試験に一発合格。インテリアコーディネーターへの第一歩として、インテリア業界のメーカーに転職。それからしばらくして、資格取得を勧めてくださった先生がフリーランスのインテリアコーディネーターだったので、それに倣(なら)う形で私もフリーに転身しました。経済的にも精神的にも夫が大きな支えになってくれていたので、フリーになることに不安はありませんでした。

多くの出会いと支えにより、会社設立へ

― その後、どんなことが変わりましたか?

インテリア業界に足を踏み入れて、カルチャーショックを受けました。そこは学歴よりもセンスがものをいう世界で、それぞれが自分の力でたくましく生きているところでした。みんな地頭がいいというか……。大手企業に勤めていた頃の私は、大きな組織に守られ、似たようなバッググラウンドや価値観を持つ人たちと同じ環境にいました。ある意味では狭く、温室みたいに、入ってしまえば安全な世界。でもそこから出て初めて、「生きていく力や稼ぐ力は学歴とは結びつかないんだ」と思い知らされました。

会社員からフリーランスになって、働き方も大きく変わりました。少し職人気質に聞こえるかもしれませんが、フリーになって最初の頃は、大御所の先輩からお仕事をいただき、先輩の背中を見て技を習得するようにして経験を積みました。そこから少しずつ自分のスタイルを確立することで、今までの働き方では味わえなかった“生きている実感”が得られました。その後、ご縁があって繋がった方から、法人化を勧められ、様々な援助までいただくことになりました。やりたいことを追求する上で、法人にするメリットがあったため、やってみようとさらに一歩踏み出し、2019年の1月に会社を設立しました。

自分で仕事を作ってきたというより、いろいろな人に支えられて「良い波」ができて今があります。夫に起業を相談した際に言われた条件は、「法を犯さず、借金を作らないこと」と、さらりと言われました。またお金の計算などは、大学のOG会で面識のあった税理士さんにお任せをしています。私は作ってもらった波に乗るだけなんです(笑)。様々な出会いに恵まれたことに本当に感謝していますし、これからも一つ一つの縁を大切にしていきたいです。

また独立の際には出産のことも視野に入れていました。企業勤めよりも、働き方の自由度が大きいと考えたんです。実際、フリーになったことで仕事上はとてもスムーズに出産を迎えることができました。仕事の仕方は出産前後で大きな変化はありませんが、仕事への考え方は変わった気がします。以前は、インテリアコーディネーターの仕事は私にとって生きがいを感じるためのライフワークのような立ち位置で、稼ぐことをそこまで重視していませんでした。でも娘を付属のある私立幼稚園に転園させたことがきっかけで費用に対する意識が変わり、利益を出す大切さも実感しています。

社会貢献のために会社を発展させたい

― これから、やってみたいことはありますか?

女性目線に立ったリフォーム事業を発展させていきたいです。インテリアコーディネーターは女性が多いですが、そのプランやデザインを施工・リフォームする職人さんの大半は男性です。そのため、「男性の職人さんに、女性の描いたイメージがきちんと伝わるだろうか」「本当にイメージ通りに作業してくれるんだろうか」と心配される方も。 作業が気になる方には、女性スタッフが立ち会うなど、女性の不安を解消できるような工夫をしていきたいです。

また、僭越ながら社会貢献として、①一定の金額の寄付、②より多くの方へのお仕事のご提供、③一度育児に専念された方への再就業機会の提供、をしたいと考えています。実現のためには、まず企業として成長しなければなりませんので、建設業許可を得ることを当面の目標にしています。建設業許可というのは、大きな工事を請け負うための法的許可です。会社として満たさなければならない要件があるので、現在はそこを目指すことと、今在宅でサポートをしてもらっている方たちを弊社の社会保険に加入できるぐらいの売り上げを上げていきたいです。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

育児は、ひとりの人間を社会で自立して生き抜く力を身に着けるまで育て上げるという、自分の人生の一部を掛けた壮大なプロジェクトだと思うことがあります。「こんなに思い通りに自分の時間が使えないものか!」と嘆きや驚きもありますが、子どもは私の生き甲斐でもあり、「この子達のために!」と思うと仕事のモチベーションにもなります。

「どうせ〇歳だから」とか「仕事していないから」とか、周りと比べる必要はありません。女性は何歳からでもスタートできると確信しています。育児だけをしているご自分に焦りを感じられることはなく、置かれた状況の中で選択し、その選択をしたご自身を誇りに思って日々を大切にお過ごしください。それから、家事は手抜きしましょうね。

わたしと街のつながり

江東区とのかかわりは?
住まい、本社共に江東区。

江東区の好きなところ
「何か役に立ちたい!」というママが多すぎて、尊敬しかない。身近なところでは、急なお願いにも関わらず、快く子どもを預かってくれたママ友など。
おすすめのスポット
最近はリニューアルオープンしたららぽーとのレストランや食事のテイクアウト。
わたしの子育て

お子さんについて
6歳(女)、2歳(男)
長女は生後10か月から一時保育の利用をはじめ、1歳児クラスへの入園の際は1歳半。仕事復帰まで一緒に過ごせた時間は今でもとても大切な時間。長男は仕事の関係で生後3か月から保育園に入れることに。少しでも長く一緒にいてあげたい気持ちもあって私だけでは決めきれず、夫が入園を決断してくれた。

子育てで大切にしていること
生きているだけでパパとママは幸せだよ、大好きだよ!!と事あるごとに羽交い絞めにして伝えている。自己肯定感の高い人間に育てることを大切にしている。
子育て生活での失敗談
生後9か月の頃、高熱が続いた息子。突発性発疹かと思っていたら、肺炎で即入院。保育園のママ友から「男の子は入院することが多いよ」と入院経験談をよく聞いていたことと、「何かあっても病院にいるのだから大丈夫!」と自分に言い聞かせて、無理やり理性を保っていた。今思えば、24時間の付き添いが必要な病院で長時間息子とだけ過ごせた貴重な時間となった。

■ 経歴 ■ 梅本 靖子(うめもと やすこ)さん
2003年大学卒業後、鉄道会社、メーカー人事職を経て、趣味の空間作りの講座をきっかけにインテリアコーディネーターに転身。2014年に独立後、第1子、第2子を出産。2019年デザインリフォーム会社、ボヌール・ブッソール株式会社を設立。インテリアに関わる顧客の様々な相談に柔軟に応えながら幅広く活躍中。インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー。2014年~2017年日本フリーランスインテリアコーディネーター協会正会員。プラスアート推進会メンバー

<ボヌール・ブッソール>
H.P.
Instagram

houzz

―編集後記―

会社員からフリーランス、その後起業。バイタリティー溢れるご経歴の靖子さんは、とても気さくな女性でした。周りに作ってもらった波に乗るだけとおっしゃっていましたが、一つ一つのご縁を大切にされている靖子さんの人柄に惹かれて、自然と人が集まってくるんだろうと思います。どんな状況にも自分で選択した道に誇りを持って進めるようにがんばっていこうと改めて感じました。