インタビュー|仕事に全力を尽くしてもいいし、子育てに専念してもいい。自分の気持ちに正直になって、生き方を選択してきた~高橋 純子さん

 

仕事に全力を尽くしてもいいし、子育てに専念してもいい。
自分の気持ちに正直になって、生き方を選択してきた

会社員・フリーランス/高橋 純子(たかはし じゅんこ)さん

純子さんは、9歳と2歳の息子さん、5歳の娘さんを持つお母さん。現在、会社員としてフルタイムで働きながら育児に奮闘しています。また、現職に就く前からフリーランスで活動していたベンチャーキャピタル(未上場企業に出資する投資会社)の採用・広報支援も続け、マルチにキャリアを築いている女性でもあります。人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

 

「やっぱり仕事が好き」専業主婦を経て再認識

― あなたにとっての人生の転機は?

現在、3人の子どもを育てながらフルタイムで働いていますが、この状況に至るまでにはさまざまな転機がありました。

今は保育・教育施設向けICTサービスなどを展開する会社の社員としてメインで働くかたわら、以前からフリーランスとして行っていたベンチャーキャピタルの採用・広報支援の活動も続けています。

もともとは、新卒で入社した会社の仕事にフルパワーを注いでいました。その後、結婚・出産・育休を経て職場復帰。復職後、子育てと仕事のバランスを考慮しながら働きたいと思うようになりました。当時はまだリモートワークもなかったので毎日出社しなければならず、初めての育児と仕事との両立に苦労しました。また、自分のキャリアを長期的に考える上でも、このまま同じ場所にいるのは違うなと思い、転職を決意。

転職後は、興味のあった新しい職種へのチャレンジとゆるやかな仕事スタイルに変化していきました。転職後しばらくして、2人目を妊娠。以前よりも子どもと過ごす時間が増えたことで、「もっと子どもと向き合いたい」と思うようになりました。また、子どもと会話ができる様になったことで教育への関心も高まり、中途半端な状態で育休を取るのではなく、思い切って退職し、専業主婦になることにしました。

仕事はしていませんでしたが、2人目を出産後、地域に住む赤ちゃんとママ向けのイベントを開催しました。主宰のきっかけは、私自身の1人目の時の育児体験。子どもが0歳児の時は孤独を感じやすいということを身をもって感じていたので、同じような気持ちを抱くママたちにとって、楽しく有益に感じられるママのためのイベントを作りたいと思ったんです。毎月1回、食育や女性のキャリアなどさまざまなテーマで開催。企業の協賛を受けるために法人営業をしたり、著名な方を呼んだりもしました。

始めて1年経った頃にコロナ禍となってしまったため、オフラインでの交流を大事にしていたそのイベントは終わらせることになりました。ですが、初めて自分一人でいちから主宰した経験は自信になりました。何より、その時出会ったママたちや協力していただいた企業と今でもお付き合いが続いていることが、とてもうれしいですね。

3人目の子どもを出産後、生活のペースもつかめてきたこともあり、少しずつ仕事に対する意欲が湧き始めてきました。一度仕事から離れたことで、「やはり自分は働くことが好きなんだ」と再認識し、子どもが生まれる前のように、社会とのつながりを再び築きたいと考えるようになったんです。ただ、いきなりフルタイムの正社員で働くのは難しいと思い、まずはフリーランスとして会社員の経験を活かして、ベンチャーキャピタルで採用・広報支援をはじめました。

次第に「もっと仕事にアクセルを踏みたい」という想いが芽生え始めました。業務委託は柔軟に働くことができますしやりがいもありましたが、もう一度「会社」という一つの船に乗って仲間と同じゴールを目指す経験をしてみたくなったんです。また挑戦してみたい、と。

そこから転職活動を始めたのですが、すんなりいかないこともありましたね。一番大変だったのは、専業主婦時代に、イベント主宰や様々な活動を行っていても企業にとっては大きなブランクとみなされてしまうこと。私自身は育児や家事含め休んでいたわけではないですし、ブランクとは思っていなかったので社会からの見られ方にギャップを感じました。でも、子育てやイベント主宰活動でどんなアクションをして何を学んだか改めて言語化し、自分のPRの仕方を工夫しました。自分のことを振り返って棚卸しできたのは、いい機会でしたね。最終的には複数の会社さんから内定を頂き、今の会社に入社。今は、自分の理想の働き方で、同じ目標に向かったメンバーとやりがいをもって楽しく働くことができています。    

ママのための食育イベント。講師はベビーフードの企業様、絵本の読み聞かせには現役アナウンサーにお越しいただきました。

 

夫から言われた一言が、育児への重圧を軽くしてくれた

― その後、どんなことが変わりましたか?

基本的には在宅かつフレックス制で柔軟な働き方ができるので、その点あまり苦労はしていません。それでも以前よりは仕事に拘束される時間は増えたので、家事代行や食事などのアウトソースサービスも活用しながら両立しています。

よく「子ども3人もいてフルタイムで働いて大変だね」と言われるんですが、1人目、2人目の出産後より、今の方が断然楽なんです。それは、育児をする上で何が大切か、何を大切にしたいか、自分の中で明確にしているから。今までライフイベントに合わせて、その都度自分と向き合ってきた過程の中で、はっきりしてきました。
その他、専業主婦から一気にフルタイム勤務ではなく、フリーランスでの活動を挟んでいたため、徐々にペースをつかめたのも良かったです。急に変わると自分も家族の負担も大きかったと思いますが、少しずつ進んできたことで変化に対応できたと思っています。

また、ここに至るまで大きなきっかけとなったのは、2人目を出産後の専業主婦の時の出来事でした。子どもと向き合える時間が増えて充実していましたが、その当時は土日もワンオペで育児をする環境でした。次第に仕事をしていない自分は、家事も育児も完璧にしないといけないと思い込んでいたんです。社会との繋がりもなく、育児も家事もきちんとできないなんて……と思ってしまいました。

そうした時期をどう乗り越えたかというと、きっかけは夫の一言でした。「子どもに何かしようと思わなくていい。可愛い、愛しいと思っているだけで十分だから」と言われたんです。誰が決めたかわからない完璧な母親像を勝手に目指し、変な義務感に縛られていることに気づきました。夫のその一言を言われてからは、一気に肩の荷が軽くなり、母として、1人の人間として自分の人生を楽しんでいる背中を子どもに見せ続けたいと考えるようになり、今もそうした気持ちで毎日を送っています。

季節の行事や子どものイベントは、大切にしています。写真はひな祭りの一コマ。

 

大人って楽しそう。子どもたちにそう思ってほしいから

― これから、やってみたいことはありますか?

まずは、今の会社で任されたミッションをメンバーと一緒に引き続き頑張っていきたいです。私は働く楽しさも、子育てに専念する楽しさや素晴らしさも感じました。ただ世の中的には、一度専業主婦になるとキャリアダウンとされ、再び仕事に就こうとすると、思うようにはいかないこともある、ということを体験しました。その中で、私も一歩踏み出したばかりではありますが、試行錯誤しながらも自分にとっての理想のライフキャリアを構築してきたので、女性のキャリアの築き方について、ポジティブに伝えていける存在として頑張っていきたいと思っています。

子育てにおいては、私が楽しく働く背中を子どもたちに見せることで、「仕事って楽しそうだな」「大人っていいな」と感じてもらえたらいいなと思っています。だからこそ、さまざまなことに挑戦をし、母でも妥協することなく実現していく姿を見せていきたいですね。趣味においては、食育に関する本をいつか出したいと思っています!

 

― ママたちへのメッセージをお願いします。

キャリアや人生の選択に、正解はないと思っています。誰かからの評価や見られ方ではなく、自分の本音に向き合い素直になること。子どもの成長によって自分の気持ちが変わることは自然なことだと思いますし、自分の気持ちに耳を傾けて、その実現に向けてどうアクションを起こしていくのがいいのか、今後も考えていきたいですね。今は働き方もいろいろありますし、ママだからこそできることや楽しめること、自分のライフキャリアを一緒に楽しんでいきましょう!

 

わたしと街のつながり
江東区とのかかわりは?

子どもが生まれてから住んでいます。

門前仲町から清澄白河までのエリアは、素敵なカフェが沢山あり、休日によく出掛けます

この街の好きなところ
緑や水辺が多く、教育機関や子ども向け施設も豊富で、子育てしやすい環境です。交通面の利便性も高いので、どこでも気軽に行けるのも江東区の魅力だと思います。
おすすめのスポット
深川エリアが大好きです。大きな公園がある木場、下町情緒と温かみのある門前仲町、モダンでオシャレな雰囲気の清澄白河、違う魅力を持った街が集約されていて本当に楽しいですね。食事やコーヒーがおいしいお店もたくさんあります。
わたしの子育て
わたしの家族

夫、9歳と2歳の息子、5歳の娘がいます。それぞれ小学校、保育園、幼稚園に通っています。(2024年1月時点)

“食べることは生きること”、子ども達に食卓やキッチンを通して伝えています

子育てで大切にしていること
先ほど話したように、母であっても妥協せずに挑戦し、日々楽しく過ごす背中を見せ続けること。加えて、夫婦仲良くすること、ご飯をみんなで美味しく食べることを大事にしています。また、常日頃から子どもたちに感謝の気持ちを伝えています。あとは頑張りすぎずに、人間なのでたまに「落ち込んでいる」などの気持ちも伝えます。こないだは5歳の娘が「落ち着いてやれば大丈夫」と励ましてくれました(笑)。
子育て生活での失敗談
子育てにおいて「失敗」の考えがあまりないかもしれません。子どもが笑顔で元気に過ごしていればいいと思っています。子育てをする上で不安や悩みに関しては、すぐに夫に相談し、一緒に解決しています。ため込まないですぐに相談や報告を心がけています。

 

■ 経歴 ■ 高橋 純子(たかはし じゅんこ)さん
上智大学卒業後、新卒で大手情報サービス企業に入社。育休を経て復職数年後、スタートアップに転職。2人目を出産後は専業主婦をしながらイベントを主宰、3人目を出産後は、フリーランスの仕事とSaas系企業に転職。
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―編集後記―

3人のお子さんの育児をしながら、正社員として働き、さらにフリーランスの活動もしているパワフルな純子さん。ポジティブで挑戦意欲を持ちながらも、自分の気持ちの変化を柔軟に受け入れ、その変化に応じて人生の選択をするしなやかさも持っています。ライフステージが次々と変わる中では、その時々の自分の気持ちに正直に向き合い、仕事にも舵を切っていいし、子どもとゆっくり向き合ってもいい。そんなことを教えてもらった時間でした。

 

2024年1月取材