インタビュー|自分を犠牲にしないママのため、ねんねアドバイザーに 〜 遠藤 祥子さん

やりたいことを我慢しない
それが家族や子どものためになる

Sleeprime(スリープライム)代表/遠藤 祥子さん

祥子さんは、長男(4歳)、次男(2歳)のママ。
赤ちゃんの睡眠改善をサポートする乳幼児睡眠コンサルタントとして活躍しています。環境に左右されることなく今の自分の「やりたい」に正直に。祥子さんが人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

制約がある中で、どう自分らしくあるか追求

― あなたにとっての人生の転機は?

出産、育児を機に会社員を辞めて、乳幼児睡眠コンサルタント(ねんねアドバイザー)になったことです。

私は人事コンサルティング会社に勤めていましたが、振り返ると会社員時代から、定年まで企業で働くのではなく、何かしたいと考えていました。漠然と女性が活躍するための支援がしたい、その中でも、実体験を活かせる女性向けのキャリアコンサルの仕事を考えつつも、「よし、やろう!」とスイッチが入ることはありませんでした。

結婚、出産を経験して会社に復帰しましたが、子どもが発熱しやすくお迎えが頻繁にありました。勤務先では子育て世代が少なく、制度も整っていなかったため、子育てしながら勤めることに対する罪悪感やストレスを感じるようになってしまいました。時間的制約がある中でどこまでできるか、この先どうしていきたいか、何を大切にしていきたのか、モヤモヤしていたのがこの時期です。

そのような心理状況下で育児をしている中で、ふと、赤ちゃんの睡眠に悩んでいるママが多いと感じました。私自身もその一人。出産前も後も、授乳、沐浴、離乳食などについては指導してもらう機会があるのに、ねんねの仕方を教えてくれるところがないんです。

そんな時に知り合いがアメリカで乳幼児睡眠コンサルタントとして働いていることを知りました。海外ではねんねの書籍も多く出版されていて、出産前から勉強をして対策を講ずる人が多いのに対して、日本では全体的にねんねに対する課題意識が低く、知識も浸透していない。毎日の夜泣きを我慢し、睡眠不足のまま仕事復帰をするワーキングマザーもいれば、1人目の育児が孤独で辛いトラウマ体験となり、2人目、3人目の出産を考えられないという人もいます。そんな悩みを持つママを助けることができれば、女性がもっと活躍できるようになるだろうし、結果的に少子化などの社会問題にも寄与できるのではないか。その考えを夫に相談すると、「社会的に意義のある仕事だし、祥子に向いていると思う」と背中を押してくれました。力強いパートナーの応援もあってやってみようと決意し、知り合いに師事して、乳幼児睡眠コンサルタントの資格を取得しました。

私の場合、やりたいことが明確になった時に、それが転機となった、というイメージです。制約がある中でどう自分らしくあるかを追求してきたのが今の自分です。

完璧を求めるのではなく、自分らしさや自分たちらしさを求めるように

― その後、どんなことが変わりましたか?

まず考え方が変わりました。会社員時代はその時々で物事を完結したかったし、どちらかと言えば完璧を求めるタイプでした。けれども子どもは自分のストーリー通りに動いてくれないし、そもそも子育てには正解がない……。完璧を求めるのではなく、自分らしさや自分たちらしさを求めるようになりました。その時うまくいかなくてももう少ししたら良くなるかな、とか。自分やみんなが楽しかったならいいかな、とか。良い意味で割り切ることもできるようになりました。

育児に関しては、前職では育休からすぐにフルタイムで復帰したので余裕がなく、子どもと「向き合う」というより「こなす」日々でした。今は子どもとしっかり向き合える時間が増えました。例えば、習い事をがんばっている姿を見に行ったり、帰宅後に一緒に遊んだり料理をする時間が取れるようになりました。子どもはすごく喜んでくれていますし、私もその時間を大切にできていることが嬉しく、仕事の励みにもなっています。

それ以外、大きな変化って実はないです。子どもがいてもきれいな格好をしていたいし、自分だけの時間を持ちたい。自分の軸はずっとあってブレることはないし、もしマイナス方面にブレそうなら、早いタイミングで原因を取り除くようにしています。

やろうと思ったときに動く勇気と、自分の軸を持ちつつも完璧を目指さない意識が今の自分を作っています。

出産後も自分らしく輝ける女性を増やしたい

― これから、やってみたいことはありますか?

仕事では、より多くの人にねんねの大切さや上手な寝かしつけの方法を伝えていきたいです。そして、ママは自分を犠牲にして子どもを優先するもの、という日本人の意識を変えていきたいし、夜泣きも我慢しなくていいと知ってもらいたい。産院や行政の母親学級で睡眠の講義があるなど、ねんねについて学ぶことが当たり前という世の中になればいいなと思います。

なぜここまでねんねにこだわるかというと、それが子どもの成長だけでなく、ママ自身のためにもなると実体験を通じて強く感じているからです。寝かしつけに時間がかからなくなり、夜泣きもなくなれば夜中に起こされることもなくなります。そうなると日中パワーが出て何事も前向きに捉えられますし、夜も子どもが寝た後は自分時間を趣味や仕事の時間に使えるようになるので、出産後も自分らしく輝ける女性が増えていくと思います。ただ、私自身今後やりたいことや、やるべきことが変わってくるかもしれないので昔ほど中長期的な視点を持たないようにしています。

プライベートでは、子どもの可能性を最大限に引き出せる環境を整えていきたいです。例えば子どもが興味を持っている遊びやお手伝い、習い事は積極的に与えています。いいなと思ったことをトライアンドエラーをしながら子育てしているので、これからもそうしていきます。そんな子育てを通して自分も成長していきたいです。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

「子どもの幸せが一番」と、自己犠牲の上で子育てをがんばっているママに、もっと欲を出して自分のために動いていいということを知ってもらいたいです。もちろん子どもとの時間はかけがえのないものですが、ママ自身が楽しんでいる姿、がんばっている姿を見せることも、子どもが今後何かにがんばる上で重要だと思います。30代だから、40代だからとか、サポートしてくれる人が周りにいないからとか、環境を理由に自分のやりたいことや気持ちに蓋をして我慢する毎日はもったいないです。ママも含め家族全員がやりたいことを見つけ、お互いを尊重してタッグを組みながら支え合って進むことが、最高の家族の形だなと私は思います。

前職時代、企業向けの人事コンサルティングが好きだった私にとって、赤ちゃんや睡眠に関わるビジネスは育児をするまで正直興味がない分野でした。子育てを経験している今だからこそ芽生えた価値観です。もし、今の生き方にモヤモヤして「もう少し子どもが大きくなったら……」と考えているなら、「今好きなこと、今大切にしている価値観はなんだろう?」と、今こそ内側の自分に意識を向けて一歩を踏み出してみてください。「やれたらいいな」ではなく、「やろう」という意識変容が行動力になります。完璧じゃなくていい。今より少しだけ「自分のため」に積極的に!

わたしと街のつながり

この街とのかかわりは?
中央区で講座を開催している。お買い物をすることも。

この街の好きなところ
交通の便がよいところと、昔ながらのものと最先端が融合されているところ。古き良きものもあれば、最新のものも手に入る場所。
おすすめのスポット
木場公園は子どもと遊んだり運動したり、あとは、四季を子どもに感じさせることができる点もおすすめ。周辺にはオシャレなカフェも多い。仕事以外で人と話す機会が少ない個人事業主にとってカフェは憩いの場(笑)。
わたしの子育て

わたしの家族
長男(4歳)、次男(2歳)、夫、私。
長男は周りをよく見る世渡り上手なタイプで次男は大胆でマイペース。我が家のムードメーカーは次男でユーモアの塊!見た目も性格も対照的な兄弟で、ケンカは絶えないけど、とても仲良し。

子育てで大切にしていること
第一に、子どもだけど一人の人間として、常に正面から向き合うようにしていること。
第二に、子どもたちをよく観察し、成長の手助けをすること。自分でできることはさせて自立を促している。兄弟でも助け合ってくれるので結果的に私が助かる(笑)。
第三に、怒ったときほど寝る前にはたくさん抱きしめたり、たくさん大好きを伝えること。
子育て生活での失敗談
……思いつかない(笑)。端から見ると失敗と言われることを、失敗と捉えていないかも。例えば強く叱ってもそのあとスキンシップを多くしてリカバリーして結果オーライにしている。

 

■ 経歴 ■ 遠藤 祥子(えんどう しょうこ)さん
乳幼児睡眠コンサルタント/ねんねアドバイザー
大学卒業後、人事コンサルティング会社にて10年以上勤務。2015年に第一子となる長男、2018年に第二子となる次男を出産。長男が生後4か月頃突然寝なくなったことをきっかけに、子どもの睡眠について学習をし始め、「米国IPHI 妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント」国際認定資格を取得。その後、Sleeprime(スリープライム)を立ち上げて活動を開始。睡眠を通じて『赤ちゃんを元気に!家族に笑顔を!』をモットーに、これまでのコンサルティング経験、自身の育児経験を活かしながら乳幼児の睡眠改善・睡眠力UPにつながる活動を行う。

―編集後記―
二人のお子さんに正面から向き合いながら、お仕事にも妥協しない祥子さん。モットーである『家族の笑顔』のためにご自身の人生を精一杯楽しむ姿はとても眩しいです。「環境を言い訳にしない」のは簡単ではありませんが、自ら体現されていて、同じ女性としていい刺激をもらい、インタビュー中もワクワクしました。お仕事をしていると子どもがいるように見えないと言われることもあるそうですが、お子さんのエピソードなどをお話しされる様子は最高のママでした。