インタビュー|子育てを「やらない理由」にするのをやめた。 着物が広げる私とママの可能性。〜月原 沙也香さん


子育てを「やらない理由」にするのをやめた。
着物が広げる私とママの可能性。

着付けサークル「亀戸着物部」主宰/月原 沙也香(つきはら さやか)さん

沙也香さんは、10歳の女の子と6歳の男の子のママ。出産を機に介護業界から退き、現在は着付け教室や着物イベントを通して自身を表現しています。家事や子育てに対し、自身の“高い理想”に翻弄された日々を乗り越えた今、「大好きな着物を多くの人に楽しんでもらいたい」と語ります。人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

“理想”で自分を追い詰めた日々。
着物が人生の楽しさを思い出させてくれた。

― あなたにとっての人生の転機は?

2018年、好きだった着物にもう一度触れてみようと思ったことです。

介護福祉士として介護の実務とマネジメント業務に携わった私は、第1子出産を前に退職し、専業主婦になりました。「妻として、母として完璧でいなきゃ」。子どもを授かってからの私はその気持ちでいっぱいでした。
掃除や洗濯は完璧に、スーパーのお惣菜や冷凍食品なんてもってのほか。私自身がそういう考えの父のもとで育っていたので、当たり前のようにそんな家庭を目指していました。でも2人の子育てをしながら家事を完璧にやりきるなんて、実際はできないことも多いんです。だから気持ちに余裕を持てない。今振り返ると、家族はそんな妻や母を求めていたわけじゃなかったのに。当時の私は自分の”理想”に縛られて、毎日がいっぱいいっぱいでした。

第2子の長男が幼稚園に入ったことで、ようやく自分のことに目を向けられるようになったのが2018年。そこで改めて、私が自分の人生を楽しく感じていたのはどんなときだったか、ふと考えてみたんです。
好きなことをしているときが楽しかったな、夢中になれたな。好きなことってなんだろうって考えると、着物がまっ先に思い浮かびました。美容師をしている母の影響で昔から着物に触れる機会が多く、私自身も着物が大好きでした。子どもが生まれてからは遠のいてしまっていましたが、20代の頃は自分で誂(あつら)えた着物を着ることを趣味にしていたほどでした。

もう一度自分がやりたいことをやってみようと思い、知人が主催する着付師養成プロジェクトに参加することを決めました。

 

思い描いた“理想”を卒業して、自分たちらしい家族の形を目指す

― その後、どんなことが変わりましたか?

心に余裕を持つことができるようになったおかげで、家族への接し方や考え方が大きく変わりました。

久々に触れた着物の世界は本当に楽しかった。着付師の講座を修了したその年に着付けサークル「亀戸着物部」を立ち上げました。私がそうだったように、子育てで手一杯で、なかなか自分のことに目を向けられないママでも気軽に参加できる着付け教室にしたいという想いで設立しました。
活動内容は、出張着付けや着付け講座の開催、着物を着る機会を増やすためのイベントの主催などです。せっかく自分で着物を着られるようになっても特別なハレの日にだけ着るのではもったいないし、着物をより身近に感じてもらいたいという気持ちもあり、お花見やクリスマス会など、季節ごとにイベントを開催しています。着物仲間との繋がりができる、というのもイベントの醍醐味ですね。

着物にもう一度触れるようになってから、自分という人間のあり方についても大きく変わったと感じます。無性にイライラしたりモヤモヤしたりする気持ちが落ち着き、子どもたちにも心に余裕を持って接することができるようになりました。以前思い描いていた”理想”の母親像は、私が一人で勝手に固執(こしつ)していただけのものでした。私たちは私たちらしい家族の形を作っていけばいいんじゃないか。そんな風に考えるようにもなったんです。
今は、「子育て中だから」「ママとはこうあるべきだから」という理由を並べて“やらないという選択”はせず、自分にとって必要なものを考えて選択するようになりました。

最近は自分の可能性を広げられる機会にも恵まれていて、どんなことでも「先」に繋がっていると感じます。自分のやりたいことと直結していなくてもまず種まきとしてやってみて、間違ったら修正すればいいと思いながら行動しています。行動が変化したことで、今回のインタビューのように、素敵なお話をいただける機会が増えました。

着付け教室の様子


お気に入りのワンピースを選ぶように、着物を選ぶ人が増えてほしい

― これから、やってみたいことはありますか?

「着物部」の活動目標でもあるんですが、着物という存在を身近なワードローブの一つになるようにしていきたいです。
今はまだ着物はハードルが高いと感じている人が多いようです。まずは、着付け教室というのは自由な発想で安心して受けられる場であるということの認知度を上げて、着付け教室に通うハードルを下げたいです。講師が教えるというよりも、自分で美しさを叶えてもらって、着物を一人ひとりの楽しみ方で満喫してもらえれば。ハレの日だけじゃない、お気に入りのワンピースを選ぶように、着物を選ぶ人が増えていくといいなと思います。


― ママたちへのメッセージをお願いします。

ママ自身の人生を楽しんでほしいと思います。育児はある意味、壮大な社会貢献プログラムだと私は思っていますが、その責任も大切にしながら、1人の人間として我慢をしないでほしいです。自分が満たされていないと、せっかくの愛情を家庭に還(かえ)して循環していくことが難しくなると思うので、自分のことも大切にしてあげてくださいね。
また、頼り上手、助けを受け取り上手になってほしいです。周りには先輩ママをはじめ、頼りになる人たちがきっとたくさんいるはずです。そうして気持ちに余裕を持って、自分の心が動くものに出合えたら、“できない理由”づけをして諦めないで、どんどん挑戦してください。私がそうであったように、素敵な転機が訪れることを祈っています。

わたしと街のつながり

中央区とのかかわりは?
江東区在住10年。職場も江東区。

お調子者の長男と。子どもと遊ぶ時間は大好きなひと時

この街の好きなところ
開発されているエリアも、下町の風情が残る昔ながらのエリアもあってバランスが取れているところ。住んでいる人の年代も幅広く、どこへ行っても誰かが優しく見守ってくれているので安心して育児ができる。
おすすめのスポット
運河沿いの景色。子どもたちとよく出かける「大島小松川公園」も広くておすすめ。
わたしの子育て

わたしの家族
夫と小学4年生の長女、幼稚園年長の長男。※2022年2月時点
長女は頑張り屋さん、長男は本当にお調子者だけど優しい。姉弟で仲が良く、一緒に自転車に乗るなどして公園をぐるぐる回って遊んでいる。

どこでも一緒に遊ぶ仲良し姉弟

子育てで大切にしていること
何があっても大切な存在であると伝えること。
物事を自分で選択できるように、思いを自分の言葉で伝えられるようになってもらいたい。なので、子どもたち自身の言葉を待ったり、言いたいことを代弁してフォローしたりするようにしている。
子育て生活での失敗談
ついガミガミ怒ってしまうことがある。そんなときはお風呂の中で謝っている。「ママも完璧な人間じゃないからね」と言うと「仕方ないよね」と言って許してくれている。

 

■ 経歴 ■ 月原 沙也香(つきはら さやか)さん
 高校卒業後、都市銀行で窓口業務などを担当。福祉系専門学校へ社会人入学し卒業後、介護福祉士として在宅介護や施設介護の実務とマネージメント業務に6年携わる。第一子出産前に退職し専業主婦に。2018年、知人主催の着付師養成プロジェクトに参加。同年に着付けサークル「亀戸着物部」を立ち上げ、“草履まで履けるようになる着付け教室”をモットーに、着付け講座や出張着付け、「着物でお出かけ」イベント企画の運営などをおこなっている。

ホームページ
Instagram

 

―編集後記―
気さくな人柄と穏やかな話し口調が印象的な沙也香さん。過去の自分を冷静に見つめながら話す姿は本当に素敵で、同じママとして、女性として、とても魅力を感じました。大切な可愛い子どもを、知らず知らずのうちに言い訳に使ってしまう。それ、私です……。沙也香さんのインタビューを通して、「やらない理由を探すより、やれる方法を探せるママになりたい」と強く感じました。素晴らしいお話をありがとうございました!

 

2021年12月取材