インタビュー|私の人生は私だけの冒険物語 そう気付けたから自分らしく一歩前に踏み出せた ~山﨑 絵美さん

私の人生は私だけの冒険物語 
そう気付けたから自分らしく一歩前に踏み出せた

社会福祉士・臨床心理士/山﨑 絵美さん

絵美さんは、長男(8歳)、長女(2歳)のママ。スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの仕事をしていましたが、2人目の育休中に独立し、希望だったグループワークトレーナーとして日々活躍しています。グループワークトレーナーとして働き始めた頃は、今までの経験では通用しないことがたくさん。彼女が人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

転職してみて、自分のことをたくさん知った

― あなたにとっての人生の転機は?

結婚や出産という大きな出来事も人生の転機ですが、全自動洗濯乾燥機やルンバの購入といった日々の生活を変える小さな出来事も自分にとっては大きな価値観の変化があったので、たくさんありますね。

そんな中でも大きな転機は、去年5月にフリーランスとして独立した活動を始めたのと、社会人を対象にした就労移行支援事業所で働き始めたことです。私は、学生時代から心理学を通じて組織や集団に働きかける仕事をすることが夢だったのですが、まずは基礎スキルをつけるため、精神科クリニックや学校でソーシャルワーカーやカウンセラーとして働いていました。そういう仕事もやりがいはあったし、楽しかったのですが、自分の夢をかなえる活動をしていこうと、2人目の産休後に退職しました。その1年後に、メンタルダウンした方が休職してから復職・社会復帰するまでをサポートする「リワークセンター」という施設で、心理カリキュラムのグループワークを進行するトレーナーになったのです。

きっかけが訪れたのは2人目の育休中に夫婦で受けたシステムコーチングというコーチングプログラム。その中で、家族のあり方から今後自分はどういうところで働きたいのかまで話し合いました。そこで気づいたのは、やはり「組織や集団に働きかけたい」という自分の気持ち。また、上の子が小学1年生という大事な時期だったので、育休中の生活ペースを保ちたいという思いもありました。以前はフルタイム勤務で、平日の育児と家事はほぼワンオペだったので、子ども二人を抱えてこれまでと同じような働き方だと自分がパンクするなと。そこで奮起して独立し、週2日は江東区内の幼稚園でカウンセラーをしながら、週2日はリワークセンターで働くようになりました。

プレッシャーに潰されそうに

トレーナーとして働き始めてまず気づいたのが、いかに自分のことを知らなかったのか、ということ。これまでも、結婚、出産を経て育児をしながら仕事をしてきて、一生懸命やっていたつもりだったのですが、そこではさらなる努力が必要な環境で、今までの経験では通用しないことがたくさんありました。

最初の3ヶ月くらいは業務についていくことに必死で、自分で勝手にかけたプレッシャーに潰されそうでした。そのリワークセンターは大手企業出身の方が多く、スタッフも成長するために必要な課題を次から次へとスピード感を持って与えられます。このスピード感に慣れるまでが本当に大変だったのですが、夫とコーチに支えられながら、どうにか乗り越えることができました。

リワークセンターに通う人達は、自分が無理をしていることや自分がどれくらい負担に感じているのかわからないまま、しんどくなってしまった人が多かったため、その人たちのサポートをするために、私も就職活動の時以上に深く自己分析する必要がありました。思えば、今までの私の仕事は「受信(聴く)」することがほとんどで、心理カリキュラムを「発信(プレゼン)」することがほとんどありませんでした。10年以上心理学をやってきたのに、自分のことが全然わかっておらず、ショックを受けました。経験したことがないことに対して、自分がそれをどう受け止めるのか考えたことがなかったのです。ですから、様々な研修や勉強会に参加して、自分が隠してきたトラウマ、守ってきた価値観や思い込みに目を向けていきました。

I’m precious, we’re precious.

ある研修で、自分の心や身体は自分のものであって、誰のものでもないという当たり前のことに気付きました。思えば今までの私は、他者に関心があってカウンセラーになったのもあって、“他者軸”で動いていました。そのため、子育てをしながら夜でもカウンセリングや仕事の打合せを受けて、保育園への迎えが遅くなり、ご飯が遅くなり、その罪悪感で自分が苦しむという悪循環に陥っていました。しかし、育休中に自分や子どもとの時間を優先できたことで自分にとって心地良い生活を知り、様々な研修を通して自己探究した結果、「I’m precious, we’re precious(私は尊い存在で、私たちも尊い存在である)」という軸ができました。

そして、NLPという比較的新しい心理学を学ぶ中で、「ヒーローズ・ジャーニー」という生き方のモデルとなる考え方を知りました。これは人生を「冒険」として、その冒険の主人公を自分自身として捉えます。冒険のゴールまでには様々な困難が起きて、それを乗り越えるためのアイテムは自分の中にあることもあれば、仲間や知恵など、新たに獲得するアイテムもある。出てきたモンスターも退治するだけでなく、仲間として引き込めることもあって、どうするかは自分次第。そう考えると、分岐点や困難に直面しても、一歩踏み出すことへの迷いがなくなったのです。

セルフ・コンパッション〜自分に思いやりを向ける〜
― その後、どんなことが変わりましたか?

転機からわずか1年、今までと同じように自分のペースでやっていたら、私の成長は5年、10年かかっていたと思います。リワークセンターで深い自己分析の必要性に迫られ、様々な研修を通して自分を知ることがこれまでの生き方まで変えることになりました。今までは仕事を最優先していたので生活のことは後回しでした。毎日バタバタしているのにできないことが多くて罪悪感がつのる日々。それが独立して仕事の調整をするようになってからは、時間の使い方と心の持ち方が変わりました。

時間に関しては、子どもとの時間が増えたことが大きな変化です。今までなら、「早く早く」といつも焦っていました。でも育休を挟んで仕事を変えた結果、小学生の息子の宿題を見たり、2歳の娘と晩ご飯を一緒に作るなど、子どものペースで時間が流れているのを感じられて幸せです。また、仕事においてはいずれ自分で企画したサービスを提供したかったので、自由になる時間を作り勉強時間を設けました。

心の面では、自分の感情に振り回されなくなりました。というのも、ちゃんとその感情を大事にするようになったから。今までなら我慢して我慢して抱えきれなくなってから怒りを爆発させていましたが、今はイライラしたら「そんなことがあったらイライラするのは当然だよね」と自分に思いやりを向けることで、不思議と怒りがスーッとなくなるのです。あまりにも自分への効果がパワフルだったので、今年の夏に「セルフ・コンパッション」というサービスとして企画したくらいです。「セルフ・コンパッション」とは、自分に思いやりを向けることで、その体験を目的としたWEBセミナーを今年の夏に初めて実施することができました。

変わろうとする人たちの後押しをしたい

― これから、やってみたいことはありますか?

自分が企画したWEBセミナーをもっと開催し、自己変革を必要としている人たちに届けていきたいです。また、自分が持っている心理学やNLPの知識を生かして、人が生まれてからそれまでの間に培った「源泉」に気づき、一人一人が幸せに生きるためのビジョンを描くサポートを続けたいです。また子どもにとっても学校では学べないことだと思うので、習い事感覚で「友達付き合い」や「やる気アップの方法」などを学べる場を創ったら面白そうだなと思っています。

そして、10年後は私も50歳。その頃には日本の子どもたちをとりまく社会課題に対して、専門的なサポートが受けられる機関を立ち上げたいと考えています。

研修で行った成果物

― ママたちへのメッセージをお願いします。

「気がつけばお昼ご飯を立ったまま食べていた」など、自分のことは後回しになっていること、多くないですか?子どものために、家族のために貢献できる場があるのは素晴らしいことですが、子育てほど思い通りにならないことはないので、最も大切なのはママとしての「私」でもなく、妻としての「私」でもなく、「今の私」です。「今の私」を起点にして進んでいけば、きっと自分も周りも幸せでいられるはずです。

わたしと街のつながり

この街とのかかわりは?
長男が2歳になるときに江東区に引っ越ししてきたので約6年。週3日は区内の幼稚園でカウンセラーをしています。

辰巳の森公園

この街の好きなところ
子育て世代にとって便利で住みやすいところ。東京駅や羽田空港へのアクセスがいいので関西に実家がある我が家にはちょうどいい。また、地域のつながりや下町の雰囲気が残っているので、住んでいて心地よく楽しい。
おすすめのスポット
辰巳の森公園。木や芝生が多く、都内にいながら森と繋がることができるところが好き。
わたしの子育て

わたしの家族
8歳(男)、2歳(女)夫、私。おっとりして優しい長男と、ちゃっかりして明るい長女。実は同じ誕生日の2人で、シンパシーがあるのか、兄弟仲は良好。

誕生日に家族からもらった、子ども達特製の誕生日カード

子育てで大切にしていること
興味のあること、夢中になれることにはできるだけ制限をかけないようにしている。どこで花開くかわらかない。ゲームやYouTubeも本人が決めた時間をやらせている。
子育て生活での失敗談長男が年少だったある日、全然ご飯を食べなかったので「いやだったら食べなくていい!」と怒鳴ったら、怒鳴られた側の体半分に蕁麻疹が出てパニック! 今では長男との笑い話だけど、当時は真剣に謝った(笑)。

 

■ 経歴 ■ 山﨑 絵美(やまざき えみ)さん
2008年よりスクールソーシャルワーカーとして校内や地域の連携支援システム構築に従事。2010年から東京学芸大学の特任講師、出産を経て都内の自治体でスクールソーシャルワーカー事業の立ち上げに携わる。また、並行してクリニックの心理士、小中学校のスクールカウンセラーとしても勤務し、10年間で1200件超の相談件数となる。現在、第2子出産を機にメンタルダウンした社会人の方が社会復帰するまでをサポートする就労移行支援事業所にて、グループワークトレーナーとしても従事。社会福祉士、臨床心理士。全米NLP協会・日本NLP協会認定NLPプラクティショナー。

―編集後記―
長くカウンセリングのプロとしてご活躍されながら、ご自身の考えが180°変わってしまうような出来事にも真摯に向き合って、それを武器に変えてきた絵美さん。大変だったこともサラリとお話しされている姿がかっこよく、目に焼き付いています。考え方によって仕事や育児への取り組み姿勢も変わるんだなと教わりました。人生は自分だけの自分のための冒険。明日からの冒険が楽しみです!