インタビュー|子どもを預ける時間は、必要な時間 自分の時間を持つことで、自分を取り戻せた〜 秋葉 恵里さん

子どもを預ける時間は、必要な時間
自分の時間を持つことで、自分を取り戻せた

一時預かり専門託児所「ママズスマイル」月島店 代表/秋葉 恵里さん

恵里さんは、2歳の女の子のママ。ご自身の経験から、気軽に子どもを預けられる託児所を運営されています。恵里さんが人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

たった2時間の一時預かりが、私を変えた

― あなたにとっての人生の転機は?

自分自身の子育てで、母親が一人の時間を作るハードルの高さを経験したことです。

結婚を機に地元を離れて、東京に引っ越してきました。妊娠・出産後、仕事も退職し、ワンオペで家事も育児もおこなっていました。ただ、今思えばここで頑張りすぎていたのですね。初めての育児で、私自身は仕事もしていなかったので、「私が家のことも子どものこともしっかりやらなきゃ!」と思い過ぎていたところがありました。夫は、子どもを預けて自分の時間を取ったほうがいいよ、と言ってくれていましたが、当時は私自身が仕事もしていないのに託児を利用することに罪悪感があったんです。そこまでしなくても大丈夫、と踏み切れずにいました。

ところが、一年ほど経って、この生活がとてもしんどくなってしまったのです。子どもや家族に対してイライラしてしまい、どんどん自分の心に余裕がなくなっていきました。限界まで来てようやく、一時預かりの利用を考え始め、利用できる託児所を探し始めました。

認可保育園の一時預かり事業はほとんど空きがなく、あっても利用回数が決まっていたり、午前中しか預けられなかったり、仕事のために預ける人が優先だからと断られたり……。民間の託児所も、たった2時間預けるために面接に行って、利用者登録をして、布団を買って持ち物を揃えて……と、預けたいときに子どもを預けるのがとても難しいことがわかりました。

そんなときに見つけたのが、一時預かり専門の託児所「ママズスマイル」です。事前の面接や別日での登録も不要で、お願いしたい時間で受け入れてくれました。

たった2時間でしたが、子どもを預けて一人でリフレッシュしたあとに子どもと向き合うと、優しくなれる自分がいました。それで初めて、いっぱいいっぱいになっていた自分に気付けたのです。

この体験は私にとってとてもインパクトのあるものでした。こんな気軽に一人になれて、それだけで心にゆとりが出て子どもに優しくなれるなら、もっといろいろなママにこういう思いをしてほしいと思い始めました。

その頃、ちょうどママズスマイルがフランチャイズを募集されていることを知りました。私自身、簡単に子どもを預けられる場所がなかなか見つからなくて苦労したので、こういう場所をもっと増やしたいし、自分でもやってみたいと思うようになりました。そして、話を聞きたいと思い、社長にアポをとって会いに行き、現在の託児所開設に至りました。

自分の時間を持つことで生まれた、心の余裕と充実感

― その後、どんなことが変わりましたか?

家でひとりで子育てしていたときと比べると、自分の時間を持ってやりたいことをできることで、充実感を得られるようになりました。

考えてみれば、子どもを生む前はそれが当たり前のことで、仕事もして、自分軸で物事も考えられていました。でも、子どもが生まれた瞬間から子ども中心の時間軸で回り始め、自分の時間を後回しにしていました。

それで心に余裕がなくなっていき、娘が人見知りして泣いたり、親を後追いしたりする毎日に、暗い気持ちになっていました。でも、今は同じように子どもが泣いたり後追いしたりしても、イライラせずに、余裕を持って子どもといる時間を過ごせています。家族への接し方も、以前のように当たることはなくなったと自分でも感じています。

かつての同じような思いをしているママが託児所に来てくれて、気持ちを共有できることにとてもやりがいを感じますし、そんなママたちが子どもを預けて帰ってくるときに、すっきりリフレッシュした顔をしているのを見るのも、とても嬉しいです。

こうしてやりたいことができている充実感に、自分を取り戻した感じがします。

気軽に預けられる場所があることを、まずは知ってもらいたい

― これから、やってみたいことはありますか?

ママズスマイルという託児所も、それが月島にできたということも、まだまだ認知が広がっていないので、まずはそこからです。もちろん、実際に気軽に利用してもらうのが一番ですが、困ったときにぱっと預けられる場所があるということを知ってもらって、いざというときに駆け込んでもらいたいです。そのために、自分で全部しなくていい、ママでなくても一時的に見てくれる人がいるということをママたちに知ってもらうための情報を発信し続けたいと思います。

また、知り合いのところに預ける感覚で来てもらいたいので、地域の人と継続的に繋がりを持っていくことを大事にしていきたいです。

さらに、ママが自分自身にスポットを当てられるところを、美容室、ネイルサロン、マッサージ店などのいろいろなお店と協力しながら増やせたらいいなと思っています。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

子どもを最初に預けることは、人によってはかなりハードルの高さを感じると思います。

子どもは預けるときに泣くものなので、預けるのが可愛そうと後ろ髪をひかれてしまい、悪いことをしている気がしてしまうものです。でも、実際にはそういうことはなく、それ以上に、ママが一人の時間を持つことで心に余裕ができ、きらきらして迎えに来てくれることのほうが、子どもにとってはよっぽど嬉しいはず。毎日疲れたーと言いながら子どもと接するより、ずっといいと思います。だから、預けることに罪悪感を感じる必要はありません。

子どもを預ける時間は、子育ての中で必要な時間、大切な時間、として捉え、自分一人で子育てせずにいろいろなところを頼って、気軽に利用して、自分を大切にしてほしいです。ママたちには、「〇〇ちゃんのママ」である前に、自分自身を大切にしてほしいと思います。

わたしと街のつながり

この街とのかかわりは?

託児所を中央区月島で運営。現在は区外から通ってきているが、ゆくゆくは近くに越して来たい。中央区を選んだのは、子育て中のママが多く、公園もどの時間帯もいつも賑わっていて、街の雰囲気も良かったこと。子育て中の一母親として、コミュニティに溶け込んで事業をしていきたいという気持ちもあり、月島の地域力にも魅力を感じた。

この街の好きなところ
開発されたエリアだけでなく昔ながらのエリアもあり、いろいろな年代の人が住んでいること。子どもが多く、ちょっと公園に行くだけでも活気があっていい。地域SNSの「ピアッザ」でも、地域の人が他愛もない会話をしていて、地域を大事にされている温かい人が多い印象を持っている。
おすすめのスポット
公園:大きいところが多く、どの公園も遊具が充実している。娘は月島第一公園でよく遊ばせている。
グロースリンク:暑い夏も涼しいところで大きい遊具で遊べるし、イベントもたくさん開催しているので子育て中の人にはありがたい。
 
わたしの子育て

わたしの家族
2歳の娘、夫、私。娘は活発で、意志が強い。いろいろなことに興味を持ってくれるので、物件探しや開業するまでのいろいろなところに連れ回していたが、都度楽しみを見つけていたよう。今も毎日託児所で私の助手のようなことをやってくれて助けられている。

子育てで大切にしていること
自分のことを大切にしながら、心に余裕を持って子育てをすること。子どもにだけに集中しすぎず、自分の時間を持つことが、結果的に子どものためになる。最近はよく虐待がニュースになるけれど、私も含め多くのママが実はそれと紙一重なのではないかと感じることがあります。どうか、孤立して子育てせずに、周りの力を頼って、まずはママが自分のことを大切にすることを大事にしてほしいと思います。
子育て生活での失敗談
一人で抱え込んでしまい、一人で何でもやろうとしてしまったこと。徐々に自分の時間がなくて当たり前だと思い、徐々に切羽詰まってくるので、自分ではまずい状況になっていることになかなか気づけなかった。

 

■ 経歴 ■ 秋葉 恵里(あきば えり)さん
大学卒業後、地元三重県で小学校教員として勤務(1年生、3年生、4年生を担任)結婚のため上京し、東京都内の学童一体化の児童館で児童館職員、放課後支援員として勤務。出産を機に退職。子育てする中で、ママがもっと自由に気軽に自分の時間を作れる場所の必要性を感じ、(株)ママズスマイルのフランチャイズに加盟。

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―編集後記―
家事も育児も全部自分でやらなければならない、そんな風に考えてしまうママは多いもの。子どもを預けることへの気持ちのハードルと、預ける環境が整っていないことへのハードルを痛感した秋葉さんご自身の経験があったからこそ、その課題への誰よりも強い当事者意識と、追い詰められているママたちに自分の時間を持つことの大切さを知ってもらいたいという想いを感じました。