インタビュー|自分だけの階段を登ろう 生まれてきた赤ちゃんが教えてくれた、私の生きる意味〜星野 彩 さん

自分だけの階段を登ろう
生まれてきた赤ちゃんが教えてくれた、私の生きる意味

beauty stretch 代表 星野 彩さん

深呼吸が出来る体になる “beauty stretch“ ヨガ、ストレッチインストラクター代表の彩さんは、3人の子どものママ。安定の大企業を辞め、フリーランスへ転身。大好きなピアノを足がかりに、リトミック講師やヨガ、ストレッチインストラクターとして活動されています。人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

生まれてきた赤ちゃんが、私の生きる意味を問いかけてきた

― あなたにとっての人生の転機は?

第三子の出産です。

転機が訪れる前も充実した日々ではありましたが、振り返ってみれば、良い母、良い妻、親からは良い娘と見られたいという気持ちに捕らわれていたように思います。 私の育った家庭はどちらかというと堅く、両親は、道を踏み外さないよう敷かれたレールを歩くことこそ幸せ、そしてそこから外れるのは突拍子もない事という考えを持っていました。

当然、親に意見することイコール反抗、と思われ、いつからか自分の感情を伝えることが苦手になっていました。好きだったピアノも、将来性との葛藤の末、趣味程度に留めておき、音大には行かずに内部進学で大学に進学。そして保険会社に就職しました。

その後、自分の本当の気持ちを見て見ぬ振りをしながら、転職や2回の産休・育休を経ながら、会社員として10年過ごしてきました。でも、上司から期待され、後輩から慕われる、そんな理想像を追いかけ続けることに疲れてしまったのです。 ちょうどそんな時、3人目を妊娠・出産しました。すると、それを機にでパーっと世界が開けたのです。生まれてきた赤ちゃんが、私の生きている意味を問いかけ、私にしかできないことを、自分がやりたいことをやるのが一番いいのだと言ってくれたような気がしました。 かつて、自分の感情を伝えることができなかった私は、行き場のない感情をピアノにぶつけていました。ピアノは自分の弾くままに受け取ってくれて、私の気持に寄り添ってくれていた存在で、一緒に生きていく同志のようなものでした。ピアノなしでは自分を語れないし、ピアノを弾いている自分が一番自分らしい自分になれると気づいたのです。そんなピアノを軸にして、自分の好きなことを仕事にしていこうと決意し、育休復帰後まもなく退社しました。 

時間から開放され、自分自身が満たされることが家族にとってもプラスに

― その後、どんなことが変わりましたか?

家庭にいる時間が長くなったので、以前は仕事が終わるまで留守番してもらっていた子どもたちを、家で迎えられるようになりました。会社員時代は私自身に時間がなかったこともあり、早く食べなさい、寝なさい、とどうしても時間に追われがちな生活でしたが、今は家庭でも仕事でも、自分のしたいことができている自分がいます。何より時間の余裕ができたおかげで、ちゃんと子どもの気持ちを汲み取る時間が取れるし、子どもの表情を見逃さず、子どものちょっとした成長を見ることができるようになりました。子どもの精神的な安定につながっていると感じています。そういう意味でも、この生活を選んでよかったと思っています。

会社員は、(もちろん自分のパフォーマンスによる部分もあるけれど、)最低限守られているという安心感があります。今の生活に飛び込むときは迷いもあったし大きな決断でしたが、一度飛び込んでしまったあとは「なるようになれ!」とわくわくする気持ちのほうが強いです。今はすべてが自分の責任になってくるのでどう転がるのも自分次第ですが、逆に自分次第で仕事がどうにでもなる、未来がどうにでもなるわくわく感で、次々とやりたいことが出てきます。

今もちょうど夏休み明けですが、また仕事のある日常に戻るかつてのネガティブな感情は一切なく、本当に自分が好きだといえる仕事についたのだと改めて実感しています。 子どもたちも、以前は私が何の仕事をしているか知らなかったですが、今では家で仕事をしているのを見ていて、ピアノに関わる仕事をしていると認識してくれているのも嬉しいです。そのおかげで家族間のコミュニケーションも増え、家族に今の仕事を認めてもらっているのが後押しにもなっているし、子どもとの時間を大事にできるようになったので家庭も明るくなりました。 仕事についても育児についても、『自分軸をもって自分がヒロインになって生きていくこと』がすごく大事だと考えるようになりました。私が笑顔になれば、時間的にも精神的にも余裕が出てくるので、自分自身が満たされるということが家族にとっても私にとってもいいことだと感じています。

自分の本来の美しさに気づいてもらいたい

― これから、やってみたいことはありますか?

女性が輝く未来、そして社会を創っていきたいです。

働くママにも専業ママにも、今の社会はいつも様々なステージで厳しい選択を突きつけくるという現実を、私自身が身をもって体験してきました。「会社と家庭、どっちをとるの?」という雰囲気を平気で出してきます。そんなまだまだ女性には厳しい社会で、理不尽さに押し潰され、貪欲になれない女性がたくさんいます。 もっともっと輝ける可能性のある女性がこの世の中にはたくさんいるからこそ、これから女性の活躍する場所をもっと増やしていきたいと思っています。

一人の女性として強く、逞しく、そして美しく、しなやかに生きるために、体も心もしなやかに美しく、ありのままの自分の体と心に向き合うきっかけを作っていきたい。そう、柳のように自分軸は持ちながらも柔軟に揺れて生きていくきっかけになれば、との思いで“beauty stretch“を始めました。この”beauty”は「自分の中の本来の美しさに気がついてもらいたい」という思いを込めています。一人ひとり、皆違う美しさを持っているので、”beauty stretch”を通してそれを引き出していきたいです。

 

― ママたちへのメッセージをお願いします。
ひとつは、「子育ての当たり前はない」ということです。
子どもはこう育てるべき、親はこうあるべき、といろいろいわれていますが、子ども一人ひとり、ママ一人ひとり皆違うから、周りに惑わされず、固定概念を子どもに教え込まず、ゆるく楽に子育てをしていってもらいたいです。

もうひとつは、「自分だけの階段を登ろう」ということです。
フリーランスになってから、大学の友人が会社で出世していく姿やバリバリキャリアを積んでいる話を耳にすると、正直焦る自分がいたのは確かで、隣の芝生は青く見えることもあり葛藤もありました。これは、そんなときにママ友が私にかけてくれた言葉です。前の自分と比べるのはいいけど、他の人と比べるのはナンセンスだ、と。自分の中の優先順位をはっきりと決めて、これだけあれば十分だ、というものをしっかり持ったら、あとは手放せばいい。専業ママも働くママも、自分の選択への納得感を忘れないで、自分らしい子育て、自分軸を持った子育てをしてほしいです。 自分の階段を一歩ずつ登っていけば、他人と比べる必要はないし、見えてくる景色も全然違うものでいい!自分の選択に納得感をもっていれば未来は拓けていきます。ママの幸せな気持ちは、必ず家庭内でも影響が出てきます。ママの笑顔の威力って、すごいんですよ!
わたしと街のつながり

この街とのかかわりは?
月島で育ったこともあり、中央区が大好き。結婚後は、沢山の思い出のある中央区から離れられず、お隣の江東区豊洲を子育ての拠点、住まいに選び、10年住んでいる。

 

この街の好きなところ
新しいものと古いものの融合。ぱっと見は高層ビルだらけだけど、ちょっと路地裏を入ると昭和の古い町並みだったりする。ビルも多いけれど、周りに緑もたくさんあって公園が多いのも好き。
おすすめのスポット
明石町の聖路加病院エリア。通っていた幼稚園は聖路加病院付近、子どもは3人とも聖路加病院で出産し、独立後も聖路加マタニティケアホームでリトミック講座もやらせてもらうなど、聖路加は私のホームベース。特に聖路加にある教会の鐘が大好きで、産後の入院中も鐘の音を楽しんでいた。
わたしの子育て

わたしの家族
夫、私、子ども3人(長男9歳、次男6歳、長女3歳)。長男(9歳)面倒見がよく、将棋が大好き。私の父と将棋対決するのが好きな優しい子。
次男(6歳)暴れん坊でレンジャー系が大好き。ミュージカルやダンスが好きで、教室に通い始めて2年になる。
長女(3歳)自分の人生の転機にもなった娘でもあり、子育てに慣れた3人目ということもあり、何をやってもかわいい。兄二人がヤキモチ焼くほど(笑)。

子育てで大切にしていること
自分の気持を人に伝えること。自分を大切にしてもらいたいということもあり、自分がこうしたい、ということを、叶わなくてもよいので、人に伝えるようにさせている。
子育て生活での失敗談ものの置き忘れはかなり多い。長女がかわいくて抱っこばかりしていたら、ある日デパートにベビーカーを置き忘れて帰ってきてしまった。これまでで一番大きな忘れ物。。。

■ 経歴 ■ 星野 彩(ほしの あや)さん
3歳よりピアノを習う。大学では経営学を専攻しながらも、趣味が功を奏してピアノ演奏活動を始める。大学卒業後は三井生命(現大樹生命)保険株式会社に就職。
約1年後、オーバーワークで体を壊す寸前で退職。その後結婚し、数年派遣社員として働いていたものの、ご縁を頂き日本生命保険株式会社に正社員として入社、約8年勤務。プライベートでは2011年に長男、2014年に次男を出産。2017年の第三子(長女)の妊娠、出産が転機となり復職半年後に会社員生活を辞め、2018年、フリーランスとなる。

 

―編集後記―

第三子の出産を機に、これまで抑圧されていたものが一気に花開いて、前に進みだした彩さん。お話されている姿がとても清々しく、充足感にあふれていて素敵でした。今まさに厳しい選択を突きつけられているママたちに、「自分だけの階段を登ろう」という言葉が、一歩踏み出す勇気を与えるのではないかと思いました。