インタビュー|仕事だけでない、家族と共に過ごした10年があるから飛び立てた 働くことで、みんなが成長できる世の中へ〜 石川 沙絵子さん 

仕事だけでない、家族と共に過ごした10年があるから飛び立てた
働くことで、みんなが成長できる世の中へ

株式会社ワカルク 代表取締役CEO / 石川 沙絵子さん

沙絵子さんは3人のお子さんのママ。2020年に起業し「働くことに夢中になれる環境をつくる。」をミッションとするオンラインのオフィスワーク代行会社の代表を務め、日々「働く」と「暮らす(子育ても)」を自分らしく両立することへのチャレンジを自ら体現しています。そんな彼女の人生の転機はどのように訪れ、どんな変化があったのか、また今後やりたいことについて伺いました。

 

私にとって「働く」とは?
答えのない問いを探し続けた日々

― あなたにとっての人生の転機は?

10年前、当時勤めていた会社の組織で初めての産休・育休を取得しました。産育休からの復職者の前例がない中で、これからどうやってキャリアを築いていこうかなと考えていたところ、ある女性が書いた1本の記事に出合いました。それをきっかけに、自分の「仕事観」を本気で考え始めたことが私の転機です。

記事の書き手は、中小企業向けに産育休制度の導入支援をしているNPOの代表でした。彼女の「ないなら、つくればいい」という言葉に心から共感し、すぐに「会いたい」とご連絡しました。実際にお会いして「お金を稼ぐためではなく、社会のために実現したいことがあるから働いている」というお話に衝撃を受けました。

私の実家は、築地で焼鳥屋を営んでいます。のれんを隔ててお店と自宅、という環境で、働く母の背中を小さい頃から見てきました。「働く」と「暮らす」に境界線がなかったので、私はずっと「働くこと=生きること」という価値観を持っていました。ニュースや就職活動などで世の中を知るにつれ、当時は女性が出産・育児で離職してしまい、その後の復職も狭き門。働きたいのに働けないと悩んでいる女性たちが多くいることに驚き、「誰もが働きやすい環境を生み出す仕事がしたい」という想いで新卒で人材会社の営業職に就きました。

独身時代や子どもが生まれるまでは、仕事に夢中で始発から終電まで働く毎日でしたが、子どもが生まれてからは、働く時間にどうしても制約ができてしまいます。「限られた時間で最大限のパフォーマンスを出すなら、やりたいことをやろう。でも、私が『本当にやりたいこと』って何だろう?」と考えるようになりました。

就職活動の時から抱いていた「社会にとって価値ある何かをしたい」という思いに加えて、子どもが生まれたことで、彼らが大人になって生きやすい良い世の中にしたいという気持ちも芽生えました。女性活躍推進をテーマにしたイベントや子育て支援のNPOなどに子どもと一緒に参加しながら自分の想いを一番実現できそうな方法を模索しました。

 

働くことは生きること。
「ないなら、つくればいい」と起業を決断

― その後、どんなことが変わりましたか?

3人目の妊娠中に、これから家族の過半数が子どもになり、上の子も、小学校、中学校……とそれぞれ別の選択肢が増えていく。その中で今までの大人中心、仕事中心の生活スタイルでは回らなくなるなと、夫婦のワークスタイルを本格的に見直しはじめました。そして仕事と生活を分断するのではなく、融合していくにはどうしたらいいのか?ということを強く意識するようになりました。

例えば、夫が地方出張に子どもたちを連れて行くことも増えました。子どもたちにとっては、働く父の後ろ姿が、よいキャリア教育になっているかもしれません。

試行錯誤を重ね、ここ数年で私たち夫婦なりの生活スタイルが確立できた感覚があります。やはり、どんなに社会的な大きなビジョンを掲げていても、まず一番身近にいる夫婦関係、家族関係をよくしていくことが重要だと思いますし、体現していきたいと思っています。夫は私のやりたいことをいつも応援してくれるので、チームメイトのようです。

昔から30歳くらいには、自分の看板で仕事をしたいという気持ちがありましたが、具体的に起業を考えていたわけではありません。ですが、私自身の「働く」「暮らす」がある程度確立されてきた今、「誰もが働きやすい環境を生み出す仕事がしたい。」という就職活動の頃から想い描いていた夢を本当に実現させようと考えているのか、改めて自問自答するようになりました。

そんな時、ある女性経営者の方に出会う機会がありました。その方は30代後半で起業され、そこから子育てをしながらも10数年、多くの社員たちが本当に生き生きと働く素晴らしい会社を経営されています。その女性経営者の方が当時起業を決意されたタイミングと、出会った当時の私は同じ歳。努力や行動、勉強はきっと頑張ればできる。彼女と私は何が違うのか、と考えたら、あとは“勇気”だということに気づかせていただきました。「ないなら、つくればいい」という10年前にみつけた記事のワンセンテンスは、私の覚悟を決めさせる言葉であり、ようやくパズルのピースが繋がった瞬間でした。

小さな頃から生活のそばに働くことがあった私にとって、働くことは生きることであり、分断せずに融合させていくのが自然な形なのだなと思います。そのために、ライフイベントの波を上手く乗りこなしながら、いつでも、どこでも働き続けられるプラットフォームをつくることを目指し、オンラインのオフィスワーク代行業として、新しい仕事のスタイルを提案しています。

やはり私は働くことが好きで、働くことで人は成長すると実感してきました。一方、働くだけでなく、暮らす、学ぶ、遊ぶという時間を家族と共に過ごしたこの10年があったからこそ、仕事だけではない人生の時間をより豊かにできる人を増やしたいという、新しい扉が開いたんだと今は思えています。

フルリモートでいつもはなかなか会えないメンバーとランチ

 

自分の枠を決めないで。
もっと自由に未来を描こう

― これから、やってみたいことはありますか?

経営者になってみて、一番大切だなと思うのは、自分の想いを伝えること。未来に正解などなく、こうしたい、に共感してもらえるかが大事だと思うので、もっともっとその想いを磨いて、未来を語っていきたいです。「誰もが働きやすい環境」を自社で早く形にし、そういう会社を1社でも増やしていけるよう、既存サービスだけでなく、新たなサービスも創り出して貢献していきたいと思っています。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

学歴とか肩書はあなた自身ではない、ということを伝えたいです。学歴や肩書は過去のもの。例えば「私は経験がないからできない」などと、自分の枠を決めたらそこで終わりです。自分の未来や可能性を信じてほしい。皆さん子どもの可能性は心から認め応援するのに、同じことを自分に思わないなんて変ですよね。ママが自信を持ってチャレンジしていれば、その背中をきっと子どもは見ているし、自信のある子どもに育つと思います。もし今の環境によってそれができないのであれば、うちの会社ものぞいてみてください!

わたしと街のつながり

中央区とのかかわりは?
中央区生まれ、中央区育ちです。社会人になってから一人暮らしで別の区に住んでいましたが、結婚を期に中央区へ戻ってきました。

誕生日の集合写真は、子どもたちの成長記録にもなってます

この街の好きなところ
どこに行くにもアクセス便利なところ。私は水辺が好きなので、墨田川、東京湾が近いところ。
おすすめのスポット
ららぽーと豊洲。買い物、食事、遊びと、家族全員で1日過ごせるのでオススメです。季節の良い時には朝や夜に散歩をするのも気持ちいいです。
わたしの子育て

わたしの家族
夫、10歳(小5・女)、7歳(小3・男)、5歳(年中・女)
子ども達は、夫の仕事についてまわって、日本の半分のエリアは訪れたかもしれません。

沖縄へ家族ワーケーション

子育てで大切にしていること
子どもに背中を見せること。そして彼らを1人の人間として見ること。
子育て生活での失敗談
特にありません。基本子どもの習い事や学校のことはそれぞれに自己管理をしてもらっているので、連絡を忘れたりすることもしょっちゅうあります。でも「こういうこと、まあ、あるよねー」くらいに思っているので、失敗ではありません!(笑)

 

■ 経歴 ■ 石川 沙絵子(いしかわ さえこ)さん
 1981年東京生まれ。明治大学法学部卒。新卒で東証一部上場の人材総合サービス会社クイックに入社。求人広告の営業8年、営業企画1年を経て、創業間もない4名の採用コンサルティング会社ジャンプに転職。採用・教育・営業等のコンサルティングを通じて、人や組織の強みを引き出すことを一貫して仕事とする一方、マーケティング・広報チームの立ち上げも経験。同時に、独身時代の始発から終電まで働くワークスタイルから、家族の変化に合わせた柔軟なワークスタイルへの変換を自ら実践。2020年9月株式会社ワカルクを設立し、代表取締役 CEOに就任。

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―編集後記―
沙絵子さんは「やりたいなら、やらないと後悔する」という軽やかな翼の持ち主です。お話を聞いて、当たり前と思っていることを見逃さずに考えて答えを見つけて、自分の未来を開拓しているんだなと思いました。皆さんにとって「働く」とは何ですか?誰かと比較せずに、自分や家族の心地よさを大切にできたら幸せですよね。どんな答えでも、自分で決めることが重要なんだなと学ぶことができました!

 

2021年6月取材