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インタビュー|転機は双子の妊娠・出産!これからは、ママの心と身体に寄り添いながらサポートをしたい〜伊藤 千菜美さん

転機は双子の妊娠・出産!
これからは、ママの心と身体に寄り添いながらサポートをしたい

理学療法士/伊藤 千菜美(いとう ちなみ)さん

年長の双子の男の子たちを育てている千菜美さん。理学療法士として、運動療法や物理療法などを用いて、リハビリテーションを行っています。「仕事と育児の両立は、ママが1人で抱えこまずにいろんなサポートを活用することが大切だと思います」と語る千菜美さん。人生の転機にどう向き合い、どんな変化があったのか。また今後やりたいことについて伺いました。

 

順調だったキャリアの途中で、双子を妊娠したと判明

― あなたにとっての人生の転機は?

まず、私の仕事について説明をしますね。
理学療法士は医療の国家資格で、身体に障害を負った方や二次的な障害が発生する可能性がある方を対象に、運動療法や物理療法などを活用して、本来の身体の機能の回復や日常生活を安全に過ごすためのリハビリテーションを行う専門職です。リハビリテーションというと整体やマッサージと同じようなものと考える方もいると思いますが、理学療法士によるリハビリテーションは、医師と協力しあって患者さんの痛みの原因を追求するのが、整体やマッサージと違う点だと思います。

理学療法士を目指したのは、高校生の頃に野球部のマネージャーをしていたことがきっかけです。卒業後の進路を迷っていた時期、野球部の監督に相談したところ、「理学療法士になれば?」と言われました。あの時の監督の言葉がなければ、私は理学療法士にはなっていなかったですね。

仕事を始めて2年目以降は、訪問リハビリで脳梗塞などの病気の後遺症に悩む患者さんの治療や、スポーツ現場(高校野球)に出張して選手のコンディショニングを担当。さまざまな疾患の方の治療をしてきました。3年ほど勤務した頃から、さらに人間の体の構造を知りたくなりました。そして、慢性的な不調や痛みを取る治療を学びたいと考えるようになりました。

そう考えていた私にとって、最初の転機は理学療法士4年目の時ですね。妊娠・出産を初めて経験することになったのですが、双子ということが判明しました。双子の妊娠・出産は通常のものとは違います。帝王切開で出産することもあらかじめ決まっていたし、診察のたびに「いわゆる安定期はないし、ハイリスク出産は免れない。すぐに入院するかもしれない」と言われていました。私の子どもたちは、双胎かつ1つの胎盤を2人で共有している状態。単胎妊娠であれば ママと子ども1対1で胎盤を共有しているものですが、それを合計3人で共有しているので大変です。家族も双子を育てた経験がありませんし、周りにも双子育児に関する詳しい情報もない。それくらい双子の妊娠・出産は未知なものでした。
私自身リハビリテーションのプロなので、妊娠中は身体に負担をかけないよう努めました。けれどお腹の子どもたちがどんどん成長していくのに伴って、私の方がどんどん動けなくなってしまって。

産後は、帝王切開の傷も痛む状態で赤ちゃんたちを必死でお世話しました。やはり、生まれたら生まれたで壮絶でしたね……。母が近所に住んでいるので、とてもよくサポートをしてくれています。ただ、子ども2人に対して大人は私と母の2人。母に来てもらってやっと1対1のワンオペ育児の状態なので、その点も大変でした。ただ、母にすぐ頼れる状態ではあるのはとても良かったです。ちょっとしたことでも言えますし、お願いしやすいですね。

双子の子どもたちはいわゆる低体重児で生まれてきていることもあり、乳児検診でグレーゾーンに当てはまることも多かったんです。だから、このまま保育園に預けても安心して仕事ができない気がしてとても不安でした。出産前の3年は仕事に集中していたのに、産後はキャリアが途絶えた気もしました。当時は、育児に追われて必死だったのだと思います。

また、育休明けにコロナ禍に突入したのも大きな転機でした。
産休・育休を取得していた整形外科クリニックが遠方で、いざ復職を検討した際の生活を考えると大きな負担になりました。そのため、クリニックには申し訳なかったのですが転職をすることを決断しました。

転職先の新しい職場でもうすぐ復帰という段階で、コロナ禍に突入しました。職場でも感染症対策のためにリハビリなどの患者さんが減ってしまったことで、「勤務はもう少し後から開始してほしい」と言われ、私も子どもも家で過ごすことになってしまったのです。 

みんなが大変な時期というのはわかっていたのですが、やっと仕事に戻れるというモチベーションが高まっていたのでとても落ち込みました。「仕事をする」「保育園へ通う」という権利はあるけれど、もう一度ワンオペで双子育児に向き合うのかと思うと、辛くて。双子を連れて外出するのは、本当に大変です。頼れる母がそばにいたけれど、それでも育休やコロナ禍の時の私は引きこもりがちでした。改めて振り返ると産後うつ状態だったのかもしれません。

復帰できた時は、本当に嬉しかったですね!子どもたちはかわいかったですが同時にクタクタに疲れていました。しかし復帰できたこと、また社会と繋がれたことがありがたかったですし、仕事時間が1番のリフレッシュになりました。

整形外科クリニックでの施術の様子

 

育児は1人で抱え込まない。家族や社会を巻き込んで、子育てをする大切さ

― その後、どんなことが変わりましたか?

復職後、働き方に大きな変化があったわけではありません。
ただ、子どもがいなかった時は、思い立ったらすぐに自分の好きなことができました。今も変わらないのですが、私はウィメンズヘルスをはじめ、いろんな分野に興味があります。出産前は、聴講したい講演にはすぐ出かけていました。でも産後はそうはいきません。

育休後に復職、そしてコロナ禍を経て、やりたいと思ったことをどうやったら実現できるかをじっくり考えるようになりました。子どものお世話をお願いするには母のスケジュールも確認しないといけません。その点も含め、深く考えてから行動に移すようになりましたね。

双子を育てることになってから、改めて実母への感謝が深まりました。母は近くに住んでいるけれど、育休までは住み込みのような形で私たちをサポートしてくれました。母も仕事をしている中で、非常にありがたいですね。私が子どもたちの送迎をできない時はお願いして、実家で母の夕飯を食べながら私の帰りを待ってもらうこともあります。

双子を育児するにあたり、お世話の方法や必要な社会資源などの情報がかなり少ないことを感じました。そこで、地域の双子サークルに参加させていただいたことをきっかけに、私も「同じように悩む双子のママたちを助けたい」と双子のいるご家庭をサポートするコミュニティ運営のお手伝いをすることになりました! 行政のヘルパーや保健師さんを頼るなど、ママが活用できる制度は数多くあります。私と同じような悩みを持っていたり、あるいは旦那さんが近くにいなかったりと、ママたちが抱える悩みは1人ずつ背景が違います。でも、サポートが必要なのは共通ではないでしょうか。だからこそ、利用できるものを駆使して自分の生活を少しでも楽にしてほしいという想いでコミュニティを運営しています。

お子さんの人数にかかわらず、「助けて!」と手を挙げることは良いことです。躊躇(ちゅうちょ)せずにサポートを受けてほしいですね。

Physio Square Ginzaでの施術の様子

 

育児と仕事を両立したいママの悩みに寄り添って治療をしたい

― これから、やってみたいことはありますか?

整形外科クリニックでの治療はもちろんですが、女性が社会で活躍する機会が増えていっている今日、キャリアを積みながら頑張りたいママたちを身体のケアというところからサポートしていきたいです。また、双子を妊娠・出産・育児をしている当事者の立場からも、ママたちにも身体も心も自信を持って人生を有意義に過ごせるようになって欲しいと思います。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

双子育児という状況が、物理的にサポートを求めないと生活が成り立たない状態だったので、私は迷わず「サポートしてほしい」と言えたのだと思います。
SNSでワンオペ状態なのにキラキラしている人を見ると、ワンオペができて当たり前なのではと悩む人も多いのではないでしょうか。私は、できないのは当たり前だし、できるようにならなくてもいいと考えています。自分1人で全てをやらなくていいし、背負わなくていい。ママという立場でも、自分の人生を生きることが大切ではないでしょうか。

またママにおすすめしたいのは、無理なく適度に運動をすること!歩く距離を伸ばすだけでも全身の巡りが良くなります。1日1回で良いので、通勤時は階段を使うというのも良いですね。
あとは、深呼吸もおすすめです!深呼吸をすることは、自律神経に意識的に働きかけることができると言われていて、交感神経と副交感神経のバランスを整えやすくなります。深呼吸をする時は、猫背ではなくバストトップの位置を1センチ上げるつもりで呼吸をしましょう。バストトップを意識することで、肺にたっぷり空気が入ります。猫背も自然と治るし、肋骨も正しい位置に戻ります。たっぷり息を吸って、しっかり吐くことで副交感神経が優位になって気持ちも楽になります。胸も張れて視線もグッと上がるので、不思議とポジティブな気分になるのではないかと思います。ぜひ休憩時間にやってみてくださいね!

 

わたしと街のつながり
中央区とのかかわりは?

現在は中央区のPhysio Square Ginzaに勤務しています。他には、ロイヤルパークホテルにて三菱地所の産後ケア事業(ユアリト)へ出張、中央区・江東区のご自宅に訪問施術なども行っています。また、中央区・江東区の双子サークルの運営サポートもしています。

地域での講師活動(親子対象の足育教室)も開催

この街の好きなところ
日本橋や銀座などの、高級感がありつつも日本らしい文化を感じられるところが好きですね。
おすすめのスポット
アートアクアリウム美術館GINZAです!金魚がたくさんいて、いろんな形の金魚鉢がある点もお気に入りです。空間自体もライトが暗めで幻想的です。ライトの当たり方も素敵で、いつも癒されます。
わたしの子育て
わたしの家族

6歳の双子の男の子たちです。(2024年9月現在)

双子の子どもたちとの1コマ

子育てで大切にしていること
一卵性の双子なので、何かも一緒と思いきや、考え方も私との関わり合い方も1人ひとり違います。双子ということで比較されることが多いのですが、子どもたちが「自分自身」を大切にできるように心掛けています。
子育て生活での失敗談
イライラすることが多く、毎日怒ってしまっては毎晩反省しています。

 

■ 経歴 ■ 伊藤 千菜美(いとう ちなみ)さん
 埼玉県出身。高崎健康福祉大学 保健医療学部理学療法学科を卒業後、国家資格を得て理学療法士に。複数の整形外科クリニック勤務を経て、現在は中央区のPhysio Square Ginzaに勤務。他には、ロイヤルパークホテルにて三菱地所の産後ケア事業(ユアリト)へ出張、中央区・江東区で自宅訪問施術も行う。中央区・江東区の双子サークル「リバーサイドツインズ」の運営補助をして、双子家庭のサポートや育児相談も行っている。地域の当事者による活動として「子育てファミリーを元気にしたい」がコンセプトの「育フェスCHUO」にも出展した。

Physio Square Ginza
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―編集後記―

理学療法士として、患者さんのリハビリテーションを担当しながら、自身の経験をもとに双子家庭のサポートや育児相談もしている千菜美さん。インタビューが進むたび、筆者も当時の育児の悩みを千菜美さんに相談したかった、と思わされるほどパワフルで笑顔が眩しい女性でした。「1人で何とかしないといけない」と考えるママも多いかもしれません。千菜美さんの「躊躇せずに、サポートを求めてほしい」という一言は、悩めるママたちを励まし、勇気付ける一言だと感じました。

 

2024年9月取材

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