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インタビュー|「患者様に合わせて臨機応変な施術をしたい!」ステップアップしつづける技術で地域密着のお店へ 〜 矢野 美帆子さん

矢野美帆子

コロナ禍で学んだ地域との絆
幸せと癒しを提供して恩返ししたい

La Plume 鍼灸マッサージ治療院 / 代表・鍼灸師 矢野 美帆子さん

美帆子さんは生後6ヶ月の女の子のママ。専門学校で鍼灸と按摩指圧マッサージを学び、卒業後から鍼灸師として働いています。中央区入船にあるご自身のお店「La Plume(ラ プリュム)鍼灸マッサージ治療院」は、ご主人が経営するカフェラテスタンド「ESORA」が併設されていています。オープン直後にコロナ禍となり……。地域の人に支えられて乗り越えた困難とは?お二人で協力して育児と仕事を楽しんでいる美帆子さんに、人生の転機のきっかけとその後、また今後やりたいことについて語っていただきました。

鍼灸とは
鍼灸は2000年以上前に中国で誕生し、日本には飛鳥時代に伝わったと言われています。

【鍼】極めて細い金属製の鍼(はり)をツボや筋肉に刺して刺激することで、身体のトラブルを改善する治療方法。
【灸】艾(もぐさ/ヨモギの葉の裏側の部分を集めて精製したもの)をツボに乗せて火を点け、その熱でツボを刺激する治療方法。

 

ルーティーンではない、お客様ひとりひとりに合わせた施術をしたい!

― あなたにとっての人生の転機は?

独立して鍼灸マッサージ治療院を開院したことです。「お客様の状態に合わせて臨機応変に施術をしてさしあげたい」と強く思ったことがきっかけでした。

高校卒業後の進路を考えたときに「人の役に立つ仕事がしたい。喜んでもらいたい」と思ったんです。当時、両親が鍼灸に通っていたことがきっかけで、私も鍼灸師になって誰かの役に立とうと決めました。そして中央区八丁堀にある、東京医療福祉専門学校に入学。ここでは鍼灸の他に、按摩(マッサージ)も学べるんです。鍼灸だけの学校は多いのですが、按摩の技術もついている学校ってじつは少ないんですよ。その少ない中から選んだのがこの学校で、私の中央区での人生の始まりでもあるんです。

無事に鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師の国家資格を取得して、卒業後すぐに鍼灸院に勤めました。鍼灸にはスポーツや不妊、病気の痛みの緩和など、専門分野が多くあるんです。1つの場所で全ての分野を身に着けることはなかなかできないので、いくつもの鍼灸院で経験を積みました。まずは4年ほど銀座にある鍼灸院で働いた後、難聴や不妊に特化した鍼灸院に約3年勤め、技術を学びました。その後も数店舗に勤めたのですが、雇われのスタッフという立場では、内容が決められたいわゆる「マニュアル化された施術」しかできませんでした。「本当はもっと施術したい部位があるのに……」「もっと効果的なところをやってあげたい」と思うときがしばしば。「雇われじゃなかったら、臨機応変にできそう!」という思いが強くなりました。途中で「独立は大変かな」と思ったこともありましたが、働き始めてすぐの頃から独立の夢を持っていました。だから迷いはなかったです。2018年9月、築地に開業しました!


以前の職場のスタッフと

 

コロナ禍、出産、復帰。地域の方々と夫に感謝

― その後、どんなことが変わりましたか?

独立してから、それまで以上にひとりひとりの患者様と向き合った施術ができるようになりました。リピーター様もついて本当に嬉しいです。患者様の身体の具合に合わせてコース内容を変えられる、私の本当にやりたかった「鍼灸」の形になりました。たとえば、ツボに触ると、固かったり柔らかかったりと状態がわかるんです。触って力がないときはお灸を据えて“気”を入れてあげます。鍼治療のコースのときでも、場合によってこのようにお灸を取り入れています。リピーター様の身体が来院の度に変わっていくことを実感できて、以前とは全く違う施術内容になりました!皆さんに少しでも良くなってもらえるように、悩み・症状に合わせて勉強しています。以前に増して努力するようになりました。

独立から1年半後の2020年4月に、築地から入船へ移転しました。きっかけは結婚です。カフェで働いていた夫も自分のお店を持つのが夢でした。「それなら、鍼灸院とカフェが併設したお店にしよう!」となり、移転に至ったんです。せっかく今のお店でリピーター様がついてくださっているので、その方々が引き続き通いやすいように近場で物件を探しました。そして決まったのが入船でした。

と、2019年11月頃に物件を決めたところまでは順風満帆だったのですが、次々と予想外のできごとが重なります。まずはとても嬉しいことではあるのですが、妊娠の発覚。つわりがひどく、でも私が動かなければお店を作れない……という状態に。つわりの辛さを抱えながら業者さんとどうにか打ち合わせをするしかありませんでした。そしてそのまま、世界はコロナ禍へ。海外から取り寄せの内装品があったのですが、その国が日本より早くコロナ禍で大変な事態に陥ってしまい、開業に間に合うのかハラハラ。なんとか間に合ったものの、オープンの翌日に緊急事態宣言が発令。自粛期間が明け、運動不足の身体をなんとかしようと患者様が来院されることもありましたが、オープンから半年ほどは集客が大変でした。でも集客サイトを利用することで、少しずつですが地域の方が来てくださるようになりました。最初にカフェに訪れて、鍼灸院が併設されていることを知り来院してくださる方もいます。地域の方々には、本当に感謝しています。

2020年8月には長女が誕生しました。そのときにはコロナ禍における立ち合い出産の規制が解除されていたので、初めての出産に夫と臨むことができました。産後もあまり長く休業はしたくなかったので、娘も一緒に出勤することでお店を再開しました。施術中は、夫がカフェラテスタンドで働きながら世話をしてくれています。そのおかげで、子連れ出勤でも施術に集中できています。


ご夫妻でカフェラテスタンド「ESORA」にて

技術を磨き、もっと地域に貢献したい!

― これから、やってみたいことはありますか?

「もっと地域に幸せと癒しを届けたい」
(2020年春の)緊急事態宣言が解除されて、来てくれるようになったのは地域の方々でした。コロナで「地域密着のお店」であることを実感しました。私たち夫婦のお店を救ってくださった地域の皆さんに、幸せと癒しを提供して恩返しをしたいです。また、自分が経験したことで、妊娠・出産・子育ての大変さがわかりました。だから、施術をするだけでなく、例えばワンオペ育児で大変な人の話し相手になるなど、身近な存在でありたいなと思います。お子さん連れでも気軽に来て頂きたいです。バウンサーや子ども用チェアもあるので。マッサージ30分だけでも大丈夫です。私なんで半日子どもと2人でいるだけでも肩や首が凝っちゃいますよ(笑)。私でよければお子様をおんぶしますし!それくらいママさん達に癒しをお届けしたいです。

「小児鍼を習得したい」
鍼灸はジャンルが多くて奥深いんです。今一番取り入れたいのが「小児鍼」。小児用は鍼を刺さず、金属のスティックやヘラでツボを撫でてあげます。夜泣き、癇癪(かんしゃく)、アトピーなど、多方面で効果的なんです。(※右の写真は小児用で使用する道具)

「鍼灸の認知度を上げたい」
鍼灸は知られているようで、実はまだまだ受診率が低いんです。鍼灸がもっと多くの方の生活の一部になってもらえるよう取り組んでいきたいです。また、お店自体ももっとたくさんの人に知って頂けるように、人との繋がりを大切にして夫婦で協力して発展させていきたいです。

― ママたちへのメッセージをお願いします。

健康第一です!遊びも家庭のことも仕事も、元気じゃないとできません。美容も健康な状態があってこそ成り立ちます。何事も土台が肝心!身体が辛いとイライラに繋がってしまうこともあります。だから心身共に健康でいてほしいです。私は水分摂取と食事を気をつけています。これだけ気を付けるだけでも違いますよ!口にするものは無理をしない範囲で添加物を控えめにしてます。水分は1日1.5~2Lを摂ってます。美容も健康も、コロナの影響で当たり前のようにできていたことができなくなってしまったと思うので、日々小さなことにも感謝して生きていくのが大切だなと感じます。何かあったら、1人で抱え込まず、こまめに周りを頼って溜め込まないようにしてほしいです。

 

わたしと街のつながり

この街とのかかわりは?
専門学校が八丁堀でした。就職は銀座、一人暮らしは職場に近い築地。結婚してからも変わらず、住居も店舗も中央区。18歳からずっと中央区と繋がっています。結婚相手は絶対に中央区に住んでくれる人がいいと思っていたので、夢が叶って幸せです!

波除神社にお参り

この街の好きなところ
「人が優しい」移転してきてお隣のお店の人が親しくしてくれたり、月島に住んでいた頃も近所の人が話しかけてくれたり。ご近所付き合いができる街です。
「新旧調和した町並み」銀座や日本橋といった近代建物が並んでぶ街にも、古い建物が存在していて、その共存している風景が素晴らしいです。
おすすめのスポット
「隅田川テラス」お散歩が気持ち良いです。春は桜が綺麗です。パリ広場も好きです。お散歩といえば、中央区は全体的に道が広くて、ベビーカーを押しやすいです。地元の調布は狭いんです……。「築地」特に場外市場と波除神社です。特にコーヒースタンドは“出会い”があるからオススメです。ここで知り合った人が紹介してくれたお店に行くこともあります。
 
わたしの子育て

わたしの家族
夫(自営業)、長女(2020年8月生まれ)、私の3人家族。
夫はカフェラテスタンドを経営しています。店舗を入ってすぐがカフェラテスタンド、奥の個室が治療院なので、家も職場も夫婦一緒です。
長女はおとなしい子です。施術中は私と離れてしまいますが、騒がずにパパと一緒に過ごしています。夜はしっかり寝てくれるので、私たちもゆっくり寝られます。おとなしいとは言えど、やっぱり子ども中心の生活になるので、日中の勉強はなかなかできないですね。


長女と一緒に

子育てで大切にしていること
夫婦仲!子どもに影響すると思うので、これは大切にしています。もちろん自分のことも大切にしています。
子育て生活での失敗談
ちょっとしたお出かけ時の持ち物を甘く見ていました!スーパーに行くとかほんの短時間の外出でも、ミルクやオムツは必需品ですね。ちょっとだから大丈夫だろうと思って持って行かなかったら、大変な思いをしました(笑)。

 

■ 経歴 ■ 矢野 美帆子さん
 1986年生まれ。La Plume 鍼灸マッサージ治療院代表。東京医療福祉専門学校にて学び、2008年に鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。銀座の治療院や、難聴・不妊専門の鍼灸院などでの勤務を経て、2018年に独立し築地に開業。2019年の結婚を機に、入船へ移転。2020年の出産後もまもなく治療院を再開し、患者の治療にあたっている。

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―編集後記―

出産ぎりぎりまで開院し、産後もまもなく再開、毎日お子様と一緒に出勤しているパワフルな美帆子さんに、同じ“母”という立場の私は圧倒されました。お子さまをおんぶしながらカフェに立つご主人の笑顔も優しく、夫婦二人三脚で営んでいる空間(お店)がとても温かかったです。子ども優先の生活の中でも、もっともっと学びたい!と励む美帆子さんに背中を押されたママさんも少なくないのではないかと思います。

 

 

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